2006年12月4日(月)「しんぶん赤旗」
海外派兵を任務に「防衛省」法案
対決姿勢どこへ 民主の賛成討論
自民拍手
自民、公明、民主の各党の賛成多数で衆院を通過した「防衛省」法案。衆院での審議では、法案の核心=自衛隊の海外派兵を本来任務(主要任務)に位置付けることについて、民主党も与党と同じ立場であることが浮かび上がりました。(田中一郎)
装備充実も
「民主党を代表して、賛成の立場から討論をいたします」
十一月三十日の衆院本会議での法案採決に先立って行われた各党討論で、民主党の笹木竜三議員が、こう発言を始めると、自民党席から拍手が送られました。
笹木氏は、法案によって本来任務とされるイラク派兵について、「派遣の根拠に問題がある」とし、「今後とも(イラク派兵に反対する)民主党の姿勢にいささかも変更はない」といいました。
審議の当初は、徹底審議を求め欠席戦術までとっていましたが、結局は採決日程で与党と合意。「問題がある」はずの法案に賛成してしまったのです。
その背景には、衆院本会議(十月二十七日)で、「かねてより防衛庁は早期に省に昇格させるべきだ」(津村啓介議員)と主張していたように、省への移行そのものには賛同する立場がありました。海外派兵の本来任務化では「本来任務化に伴う人員、装備の充実が求められている」(前田雄吉議員、十一月二十八日の安全保障委)と政府を後押しする立場まで示しました。
タカ派競う
さらに見落とせないのは、自民党と民主党の議員が、タカ派的立場を競い合っていたことです。
政府が開発・配備を進めている「ミサイル防衛」に関連し、安倍晋三首相は米紙に対し、米国向けの弾道ミサイルの迎撃を禁じた憲法解釈変更の検討を言明しました(同十四日)。
これに呼応し、民主党の長島昭久議員は「(憲法)解釈の見直しはぜひやるべきだ」と歓迎。そのうえで「日本が単に(日本を守るために)日本海に(迎撃ミサイル搭載の)イージス艦を浮かべるだけでなく、西太平洋でアメリカ軍と一緒に活動していくことも展望し、アメリカ向けミサイルへの迎撃体制を整備していく議論を」と求めました(同三十日)。自衛隊に“米国防衛専門”任務まで負わせようというものです。
また自民党の大塚拓議員は、北朝鮮問題を念頭に、自衛隊の特殊部隊を侵入させ、ミサイル基地を撃破することも「憲法に抵触しない」と提案しました(同九日)。民主党の内山晃議員も「クルージング(巡航)ミサイルのようなもので、撃たれる前に撃つ。よほど効率のいい防衛ができる」と求めました(同二十八日)。
軍事一辺倒でエスカレートする議論に、久間章生防衛庁長官さえ「そうしたらそうしたで、向こうが警戒を持って、もっと軍拡にもなりかねない」と、たしなめる側に回りました。
この間の「防衛省」法案の審議は、国の根幹にかかわる問題で、民主党が自民党と違いがないことを示しました。