2006年12月4日(月)「しんぶん赤旗」
主張
核通過容認発言
非核三原則崩しは許されない
麻生外相らの核保有発言に続き、久間防衛庁長官が緊急時に核兵器積載米艦船が領海通過することを認める発言をくりかえしています。
核積載艦の領海通過はいかなる形であっても核持ち込みであり、核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」の非核三原則に反します。にもかかわらず防衛庁長官が領海通過容認発言をくりかえしているのは非核三原則そのものの突き崩しをねらっているからです。
自衛隊法等「改正」案の審議のなかで争点となったにもかかわらず、発言をそのままにして衆院で法案の採決を強行したことは許せません。
アメリカの戦略要求
久間防衛庁長官は、領海を「かすめて」通るのは「核持ち込みにはならない」、「緊急事態」の通過は「やむを得ない」と発言(十一月十六日)、その後も同種の発言をくりかえしています。しかしそのいずれの場合も過去に浮上し、国会審議のなかで政府がはっきりと否定した決着済みの問題です。
一九六八年三月、三木武夫外相(当時)は領海を「かすめても核持ち込みの概念に入らない」と国会で答弁し大問題になりました。その後首相となった三木氏は、日本共産党などの追及に発言を修正し「核通過は持ち込み」と言明しました(七六年四月二十三日)。この経過を無視し決着済みの問題をむしかえすのは、「持ち込ませず」の原則崩しに執着しているからです。
久間長官は「緊急事態の場合はやむを得ない」ともいっていますが、これは「事前協議をするいとまもない」ときには核持ち込みを認めるというものです。これも「緊急避難という場合においても核持ち込みをお断りする」(一九八一年六月一日鈴木首相=当時)と政府が言明していたことに反します。いずれにせよ、久間長官のねらいは核積載艦の領海通過に道を開くことにあり、それを定着させることにあります。
久間長官発言の背景には日米安保条約締結のさい日米両政府が結んだ、核積載艦・機の領海・領空の通過を事前協議の対象からはずすという核密約があります。久間長官が核通過容認発言をくりかえすのは、日米軍事同盟の侵略的強化を進めるいま、核通過を公然化することがブッシュ政権の要求にこたえる道だと知っているからです。
ブッシュ政権は、今年のQDR(四年ごとの国防計画見直し)で「強力な核抑止力」の維持を強調し、米統合参謀本部が作成した核兵器使用作戦のための新指針を運用していると伝えられます。アメリカの敵対国が大量破壊兵器を持ち「使用の意図を持っている場合」などには核兵器を使うという方針のもとで米軍再編が進んでいます。
日米両政府が合意した米軍再編合意にもアメリカの核抑止力が「不可欠」ともいっています。対テロ戦争のなかで核兵器の再搭載が指摘される原子力潜水艦が日本寄港をくりかえしていることも見過ごせません。
被爆の原点忘れるな
核積載艦の領海通過容認は、日本を核兵器使用を柱とした先制攻撃戦略の足場にすることを意味します。絶対に認めることはできません。
非核三原則は国会でもくりかえし決議され、いまや憲法に準じる「国是」ともなっています。国際的な約束表明にもなっています。
非核三原則崩しの策動を許さず、しっかり守り抜いて、世界に核兵器廃絶を訴え続けることこそ被爆国日本が世界平和に貢献する道です。