2006年12月3日(日)「しんぶん赤旗」
ローマ法王のトルコ訪問
「和解と対話の旅」に
EU加盟支持・聖地へ黙想
イスラム側“歓迎”
カトリック教会の頂点に立つローマ法王ベネディクト十六世は一日、四日間にわたるトルコ訪問を終えました。イスラム教と暴力を関連付けた九月の失言で批判を浴びてから二カ月余り。結果的には好感をもたれた「和解と対話の旅」になったといえそうです。(パリ=浅田信幸)
国民の99%がイスラム教徒のトルコは、法王の失言に最も強く反発した国の一つです。訪問に抗議するデモも予定され、ブッシュ米大統領の訪問時を上回る警備体制がしかれた「デリケートな訪問」になると予想されていました。
こうした事前の神経質な観測を覆したのは、エルドアン首相との会談で法王が示したトルコの欧州連合(EU)加盟への支持と、ブルーモスクの名で知られたイスタンブールのスルタンアフメット・ジャミ訪問でした。
ベネディクト十六世は、法王になる前の二〇〇四年に、トルコのEU加盟を認めることは「大きな誤り」と発言しました。バチカンの正式な態度表明ではなかったとされますが、これを今回、公式に撤回したことになりました。
ブルーモスクで法王は、イスラム教最大の聖地であるメッカに向かってしばし黙想しました。法王としてのモスク訪問は、過去に一例があるだけ、この行為はたいへん象徴的な意味をもちました。
イスラム法学者は「謝罪よりもはるかに重要な行為」と歓迎。トルコ各紙も「イスタンブールの平和」と大きく報道しました。法王に同行したエチェガレイ枢機卿は、前法王のヨハネ・パウロ二世がエルサレムの「嘆きの壁」の前で頭をたれ、ユダヤ人に対する謝罪の意思を示したのに並ぶ歴史的な行為だと指摘しています。
法王はトルコを離れるにあたって「この訪問が宗教間の平和と対話に貢献することを期待する」とのべました。トルコのイスラム教権威者であるバルダックオール宗教庁長官は「非常に積極的な一歩」であったとしています。
預言者ムハンマド(マホメット)の風刺画問題や、イスラム教徒女性が着けるベール(スカーフ)論争で、宗教や文明間対立の風潮がうまれるもとで、それを克服する対話の努力として評価されています。