2006年12月2日(土)「しんぶん赤旗」
非正規保護法が成立
2大労組の評価割れる 2年勤務で正社員
韓国
韓国の国会で十一月三十日、契約社員や派遣社員が同じ企業に二年以上、勤務する場合、企業に正社員化を義務づける非正規職保護法が成立しました。韓国では非正規職労働者が八百四十一万人に達しており、深刻な社会問題になっています。非正規職労働者の正社員化に道を開くためとする同法に対し、二大労組の評価は割れています。
同法は、短期雇用の契約社員と人材派遣会社からの派遣期間を最長二年に限定。勤続期間が二年を超えた契約社員は、「無期限勤労契約者」とみなして正社員と同じ解雇規制を適用し、派遣労働者の場合、雇用の継続を企業に義務付けます。
現行法は、短期雇用契約の期間を一年と規定していますが、企業が正社員に適用される解雇制限の抜け道として、短期雇用を繰り返す事例が増えているため、雇用義務を強化する法制化に踏み切りました。
また、同種・類似業務に従事する労働者を、「非正規を理由として差別的な処遇をしてはならない」と賃金・労働時間などの差別禁止を明文化。労働者が差別待遇を受けた場合、労働委員会に是正命令を申請する制度の導入も盛り込まれました。
野党・民主労働党や全国民主労働組合総連盟(民主労総)は、「勤続二年未満の非正規労働者を自由に解雇できる制度で雇用の安定につながらない」と批判。非正規労働者の雇用は、正規労働者が疾病、負傷、出産、育児などで働けない場合に限る「事由制限」の導入を求めてきました。
同法は、二月に国会の環境労働委員会で与党・開かれたウリ党、最大野党・ハンナラ党の賛成で可決。四月には、韓国労働組合総連盟(韓国労総)が法案の一部修正で合意しました。
三十日の国会では、林采正議長が法案を議長権限で本会議に上程。ウリ党、ハンナラ党の賛成多数で可決しました。
民間機関の「韓国非正規労働センター」によると、非正規社員数は二〇〇六年八月現在で八百四十一万四千人、総労働者数の54・8%を占めています。賃金は正社員の51・3%にすぎません。また雇用保険や健康保険、国民年金制度の加入は三割にとどまっています。
労働省は同法の成立を「社会の両極化解消に向けた最初の一歩」と評価。一方、民主労総は一日、国会前で糾弾集会を開きました。(中村圭吾)