2006年11月30日(木)「しんぶん赤旗」
主張
タウンミーティング
民意偽る「やらせ」と「さくら」
教育基本法改悪案提出の前提になった、政府主催の「教育改革タウンミーティング」をめぐる不正が、いよいよ明白になりました。
全国八カ所で開かれたタウンミーティングのうち青森県八戸市など五カ所で、発言者や発言内容を組織する「やらせ」が行われていたことがすでに明らかになっています。加えて六カ所では、政府が自治体や教育委員会などに参加を依頼する「さくら」の動員が行われていたことが明らかになりました。これで国民の声を聞いた、「改正」が支持されたとはとてもいえないのは明白です。
「国民的理解」の実態
文部科学省は教育基本法改悪案の提出にあたり「タウンミーティングで国民的な理解を深めてきた」(小坂憲次文科相=当時=)と説明してきました。その「国民的理解」の実態が、半数以上のタウンミーティングで「やらせ」や「さくら」が行われていたとは恐れ入ります。法案提出の前提が欠けることになります。
法案提出の当事者による「やらせ」や「さくら」は、法案提出の資格そのものにかかわります。これまでも繰り返し求めてきたように、教育基本法改悪案は政府自身が撤回すべきです。衆院で採決を強行したうえ、参院でも成立をごり押しするなどというのは絶対に許されません。
見過ごせないのは、明らかになった不正がいずれも悪質で、手が込んでいることです。
たとえば「やらせ」は、日本共産党が最初に国会で取り上げた八戸の場合、内閣府が発言者を組織したうえ、文部科学省が教育基本法「改正」に触れてほしいと、わざわざ質問項目案を作って発言者に依頼するという念の入ったものでした。タウンミーティング前日には「棒読みにならないように」などの注意事項まで送付されていました。国民と「率直な意見交換」(開催概要)どころか、教育基本法改悪に賛成の雰囲気づくりのためにタウンミーティングを行ったことになります。
タウンミーティング参加者を自治体や教育委員会関係者に依頼する「さくら」の動員も、政府が二十七日国会に提出した資料によれば、八戸でも当日の参加四百一人のうち実に七割を占める二百七十九人が政府の依頼で青森県教育庁などが組織したものでした。報告では八カ所のタウンミーティングのうち、政府が動員を依頼したのは六カ所となっていますが、国が依頼しなかったのに県などが「自発的」に組織したというのもあります。文字通り、行政側の動員で埋め尽くされていたことになるではありませんか。
こうした実態は、「やらせ」や「さくら」が一部の偶発的なことではなく、改悪案提出に向けた「世論」づくりのために、提出者である政府の手で組織的・計画的に行われていたことを示すものです。文字通り民意の偽装であり、世論をねつ造した政府とりわけ文部科学省の責任は免れないものがあります。
成立強行は許されない
政府が「やらせ」や「さくら」までして民意を偽装したのは、何のための「改正」かを国民に説明できず、国民からも「改正」を求める声が上がらなかったからです。国会審議のなかでも、政府は「改正」がいじめや未履修などの問題を解決するものではないことを認めざるを得ません。
国民が求めてもいない改悪案の強行は許されません。民意を偽装した改悪法案を国民に押し付ければ、二重三重に主権者の意思を踏みにじることになります。