2006年11月29日(水)「しんぶん赤旗」

主張

原子力空母の配備

住民投票で決定すべきものだ


 米海軍横須賀基地への原子力空母配備の是非を問う住民投票条例の制定を求める署名運動が横須賀市でくりひろげられています。

 米空母の母港化を認めてきていること自体、世界にはない異常な事態です。原子力空母の母港に変えるのは米軍の先制攻撃能力を高めるとともに、横須賀四十二万市民はもちろん、首都圏三千万人に核事故と隣り合わせの生活を強いることになります。住民投票条例を制定させ、住民投票で政府・横須賀市の一方的母港化決定の是非を問うのは当然です。

冷却水放出の危険

 米原子力空母の配備を認めることになれば、一年の約半分の横須賀基地停泊を認めることになります。くりかえされる米原潜寄港に加え、原子力空母が配備されれば、横須賀市民はますます核事故におびえて暮らさなければなりません。市民の頭越しに決めた政府方針を押し付けるなど許されることではありません。

 政府は米原子力艦船が核事故を起こしたこともなければそのおそれもないと宣伝しています。外務省が作成し横須賀市内で大量配布しているパンフレット『米海軍の原子力艦の安全性』は、原子炉は「堅固」、核事故は「一度もない」、「放射性物質の異常値が観測されたことは一度もない」といっています。アメリカの受け売りの宣伝であり、日本政府の主体性など皆無です。

 さきに横須賀基地内で米原潜ホノルル号が放射性物質を放出した事故では、政府は検証もせず、アメリカに原因究明すら求めませんでした。一九六八年に原潜ソードフィッシュ号が佐世保港で放射性物質を放出したときにも、政府はアメリカの責任を追及もせずうやむやにしました。

 こんな態度で、米原子力艦船が事故をおこさないとか事故のおそれもないとよくもいえたものです。

 事故は多発しています。横須賀基地に配備予定の空母ジョージ・ワシントンと同型の空母ジョン・C・ステニスも冷却水取水口の目詰まりで原子炉を緊急停止したことがあります。米原子力艦は事故がないのではなく、日米両政府が「事故を一度も発表してこなかった」だけです。

 しかも、日本政府が日本の港内では第一次冷却水は放出されないといってきたことも欺まんである疑いが濃厚になっています。

 ソードフィッシュ号事故のあと公表された日米外相覚書(六八年十月二十二日)は、「通常第一次冷却水が放出されることはなく」といっていますが、六八年九月二十七日の米陸軍省文書は「放射性廃棄物の放出についていかなる保証もおこなわない」とのべています。国務省が作成した極秘指定の「ジョンソン政権時代の国務省六三年―六九年」でも、冷却水を放出しないとの厳格な保証要求について「われわれにはそのような保証を与えることは不可能だった」としています。作戦上必要なら冷却水の放出を当然視する態度です。

住民自治の発揚

 政府はアメリカいいなりの原子力空母配備決定を撤回すべきです。住民投票は、住民が直接地方政治に意思を反映するための大事な権利です。住民自治は地方自治の根幹をなすものであり、国も地方も住民自治を尊重するのは憲法上の義務です。

 住民投票は新潟県巻町の原発建設などをストップさせるとともに、住民自治を発展させる力ともなってきています。

 横須賀市民の安全と住民自治を守るために、住民投票条例の制定を求める署名運動を成功させましょう。


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