2006年11月28日(火)「しんぶん赤旗」
主張
教基法10条改悪
憲法違反が生む根本的矛盾
政府・与党は、教育基本法改悪案の今国会成立をねらっています。しかし、教育への権力的統制・支配を無制限に広げる教育基本法改悪は、教育の自主性と自由という、憲法の民主的原理を根本から蹂躙(じゅうりん)するものです。改悪を絶対に許すわけにはいきません。
国家介入の歯止めなし
改悪案が強行されるなら、子どもたちに「国を愛する態度」などの徳目の強制だけでなく、全国一斉学力テストの強行で、いじめ自殺や未履修問題の温床となっている競争とふるいわけの教育に拍車がかかります。政府案が現行基本法の一〇条を改悪して、国家権力の教育への介入を無制限に広げるのは、徳目の強制や競争教育をだれにもじゃまされずにおしすすめるためです。
現行法が、「人格の完成」をめざすという「教育の目的」を実現するために、国家権力による教育内容への「不当な支配」を厳しく禁じているのと比べると、“子どものためより国のため”への大転換です。
改悪案が、憲法に違反することは明らかです。教育の自主性、自律性、自由の尊重は、憲法が求める大原則です。それは、一三条の幸福追求権、一九条の思想・良心・内心の自由、二三条の学問の自由、二六条の教育を受ける権利などにもとづいています。国家権力の教育への関与のあり方が問われた学力テスト旭川事件の最高裁判決(一九七六年)も、“憲法の下において、子どもの成長を妨げるような国家的介入は許されない”とのべています。
衆院では、日本共産党の志位和夫委員長が、最高裁判決を示して追及し、政府は、教育内容に対する国家的介入については、「抑制的であるべきだ」(五月二十六日の教育基本法特別委員会、当時の小坂憲次文部科学相)と認めました。一〇条で国家介入の抑制を保障している現行法を改悪して、国家介入の歯止めをなくす道理は、まったくないのです。
改悪案が抱える、憲法違反という根本的な矛盾は、参院特別委員会での、政府の答弁にもあらわれています。
伊吹文明文部科学相は、「国であろうと、一部の政党を陥れようとか、一部の宗教的考えを持って教育行政を行えば、『不当な支配』になる」(二十四日)とのべました。国家による教育行政も「不当な支配」になりうると認める答弁をしたのですから、これに歯止めをかけることがどうしても必要です。
二十七日の参院特別委員会では、日本共産党の井上哲士議員が、「日の丸・君が代」の強制と、憲法とのかかわりを質問しました。
「君が代・日の丸」が、過去に軍国主義の精神的支柱として用いられたことは、だれも否定できない歴史の事実です。そのために少なくない国民が抵抗感や批判をもっています。こうした国民の思想・良心の自由が憲法上保護されるかどうかについて、塩崎恭久官房長官は「思想・信条は自由だ」と認めました。
徹底審議して廃案に
生徒の起立しない自由、斉唱しない自由は、憲法一九条によって保護されている、たいへん強い基本的人権だということが、政府の答弁でもはっきりしました。教育基本法一〇条を改悪する大義はないのです。
教育基本法改悪案は、国家権力による教育への介入に歯止めをなくし、憲法で保障されている思想・信条の自由、教育の自主性・自由を侵害するものです。憲法違反の改悪案は徹底審議して、廃案にすべきです。