2006年11月27日(月)「しんぶん赤旗」

列島だより

行政が支援 農村を創る


 食の安全・安心への関心が高まるなか、自治体が農家を支援して、地元の特産品づくりで消費者に喜ばれ、農家も元気になるとりくみがおこなわれています。長野県木島平村と福島県鮫川村の経験を紹介します。


化学肥料も農薬も減らす

安全の作物 消費者安心

長野・木島平

地図

 長野県の木島平(きじまだいら)村では、「ほっと・もっと・ずっと自然劇場木島平」をキャッチフレーズに、持続的な農業生産体制を確立し、豊かな自然と共生する村づくりを進めています。

 二〇〇一年には村内に農産物直売所「たる川」を、〇三年には姉妹都市の東京都調布市にアンテナショップ「新鮮屋」を開設し、栽培された農産物が流通するようにしています。流通を学校給食や量販店へ広げるとともに、消費者と生産者の交流や学習会も盛んにおこない、相互理解を促進しています。

未利用資源で

 有機の里木島平≠ヘ、地域内の未利用資源を活用した資源循環型(耕畜連携)の持続的な農業生産体制を確立してきました。化学肥料や化学合成農薬の使用を減らし、安全で安心な農産物生産と信頼される産地づくりにもとりくんでいます。

 〇一年に堆肥(たいひ)センターを建設して、村内の畜産農家から排出される排せつ物と菌茸(きんたけ)農家から排出される廃培地を混合した高品質堆肥化(有機質資材)を村内の農地に還元して地力の増進をめざしています。

エコファーマー

 県農業改良普及センター、JA北信州みゆき農協など関係機関で「有機の里推進室」をつくり、栽培基準の作成と現地指導をおこなっています。参画農家の組織として「木島米ブランド研究会」「木島平有機米研究会」「木島平ベジタクラブ」が活動しています。今年は、「土づくり・減化学肥料・減農薬」の三つの技術に一体的にとりくむエコファーマー五十一人が誕生しました。

 その一人、丸山勝敏さん(61)はいいます。「除草剤を減らしたり、使用しない抑草技術の早急な確立をめざし、米の有機栽培(JAS認定)を三年前から始めています。残留農薬のポジティブリスト制度(残留基準の設定されていない農薬が残留する食品の流通を禁止すること)が実施されるなか、〇七年度から導入される『農地・水・環境保全対策』では地域一体となって環境にやさしい農業に取り組むことが必要不可欠です。『食の安全、安心』めざし、仲間と一緒にすすめたい」

村も認証制度

 コメ、ミニトマトは農水省の特別栽培農産物として認証、アスパラガス、きゅうり、大豆、そば、ズッキーニは県の環境にやさしい農産物認証を受け、その他の品目は村の認証制度を創設して認証しています。特産品であるコメを中心に三十八品目を栽培基準に策定しています。

 もう一つのキーワードは「自然の豊かさを検証」です。村内にある県立下高井農林高校と連携し、講師派遣、田んぼの生物調査などを進めています。人口五千三百人の小さな村の地味な取り組みですが『オラ村の田んぼの生物図鑑』の発刊をめざしています。

 (木島平村産業課 有機の里推進係 小林広明)


種を格安提供、全量買上げ

みそや豆腐に…雇用も増

福島・鮫川

地図

手・まめ・館

 福島県の南部にある鮫川(さめがわ)村は、人口四千四百人で、標高が四〇〇bから七〇〇b、山々の間に農地と集落が点在する中山間地域です。

 二〇〇五年十一月に旧幼稚園舎を改築して農産物直売・加工施設「手・まめ・館」がオープンしました。ここには、豆腐、きな粉、豆菓子、みそなどの加工施設が補助事業で整備され、新たに六人の雇用が生まれました。

 人気の「達者の豆腐」は、一日百五十丁限定で夕方にはほぼ完売です。みその売れ行きも好調です。直売所には、生産者が丹精込めた野菜や加工品が並べられてにぎわっています。「豆で達者な村づくり」事業は、高齢者の大豆づくりから出発して、さまざまな事業に発展しています。

 しかし、村の産業の中心である農業は、就業者の高齢化と後継者不足が進み、農業の不振が商店の経営や地域経済にも影響を与えています。

村をなくすな

 鮫川村では〇二年七月、福島県で最初の二町一村の合併協議が始まりました。前村長は、町村合併によって財政困難を解決しようとしました。一方で、合併問題を考える住民団体が組織され、講演会や討論会で、合併しても財政はよくならないことなどが明らかにされました。

 〇三年七月に実施された住民投票は、合併反対が71%を占め「合併したら小さな村はいっそうさびれてしまう」「村をなくすな」と多くの村民が自立することを選びました。

 住民投票の直後に村長が辞任し、同年九月に就任した大楽勝弘新村長は、農業の振興による村づくりをめざす「豆で達者な村づくり」を提唱しスタートしました。

 農業経営者として経験が豊富な高齢者の知識を生かし、生きがい対策を大豆づくりに求めました。これは、自立の一歩として地元の資源を生かした農業の振興を図り、沈んでいる村の経済や村民に元気を取り戻そうとスタートしたものです。

 本郷伝さん(78)=西山在住=は「大豆を十e栽培し、八万円ほど売り上げがあった。収入は年金しかないので、小遣いを稼げるので喜んでいる。今年は面積を増やして十五eにした。張り切ってやっているよ」と元気です。

村で加工販売

 大豆の種子は村が格安に提供し、収穫した大豆は全量村が買い上げます。〇五年の栽培者は百五十八人、総集荷量は一六・四d、買い上げ額は四百二十三万円に上ります。大豆は、市場に出さず村内で加工・販売します。

 安全・安心の農産物の生産、有機肥料づくりとともに、学校給食の取り組みでは、隣町の業者に委託していた給食炊飯を、村内で取れたコメを自前で炊飯する米飯給食をモデル校で実施しています。近い将来は全小中学校で行う計画です。

 日本共産党鮫川支部の人も豆づくりに参加し、生産者、消費者と協力して小さい自治体でも自立する村づくりをめざしています。

 (鮫川村議 関根勝義)


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