2006年11月26日(日)「しんぶん赤旗」
投資被害「虎の子を…」
国の監督責任問う声
「近未来通信」の経営混乱
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インターネットを利用したIP電話事業の「近未来通信」(東京都中央区、石井優社長)の経営が混乱しています。IP電話事業を口実に投資家から数百億ともいわれる出資を募ったものの、現在、配当はほとんどが停止状態に。本社は事実上の閉鎖、姿を見せない社長や幹部…。投資家からは「計画倒産をする気か」「虎の子のお金を返して」という抗議が。同時に国の監督責任を問う声もあがっています。
近未来通信は、電話の中継局の設置費用を投資家に負担させるというやり方で成長してきた企業です。「中継局オーナー」になるための投資金は最低でも一千百万円。電話事業収入をもとに、多額の配当金を約束し勧誘していましたが、今月以降は支払いが滞っています。実際には、配当金のほとんどが、電話事業収入ではなく、投資家から集めた資金でまかなう“自転車操業”状態だと指摘されていました。
東京の三弁護士会が二十一日に行った「金融商品被害110番」には、近未来通信に関して百七十七件もの相談が寄せられました。五千万円以上の投資をしたという相談も七件ありました。国民生活センターには二十四日現在で二百二十六件の相談が。投資は、全国で三千人、四百億円にのぼるという指摘もあります。
「規制緩和」で市場参入可能
近未来通信の設立は一九九七年。「規制緩和」が市場参入を可能にしました。
近未来通信の宣伝パンフレットには「総務省 一般第二種電気通信事業者」と記されていますが、これは総務省に届け出れば誰でも取得できるものです。審査や調査はありません。
ある男性オーナーは、「これを見たら、国のお墨付きをもらった業者だと思って、信じてしまいますよ」と肩を落とします。「こんな、いいかげんな業者を野放しにしていいわけがない」と憤ります。
投資による被害について監督官庁は事態をどう見ているのか―。
通信事業者の監督官庁である総務省は、電気通信事業法に基づいて事業内容の点検には乗り出したものの、「投資者保護にまではうちも手を出せない」という対応。「はっきりとは分かりませんが、扱っている投資内容が金融商品であれば金融庁、マルチ商法やねずみ講になるならば、経済産業省の管轄です」といいます。
金融庁は「現時点で金融商品と特定することは難しい」と、これも及び腰。経済産業省は、「まことに恥ずかしながら、契約の中身、事実関係がよく分からない」…。さながら監督者“不在”の様相です。
大手新聞に一面広告掲載
マスコミも同社の知名度を高めるのに一役買いました。近未来通信はつい最近まで、大手新聞に一面広告を掲載。テレビCMなどには、有名俳優やスポーツ選手を起用していました。
被害者には、退職金をつぎ込んだ人もいます。
ある被害者は、投資をしてしまったことに対する自責の念と不安にさいなまれる毎日を送っているといいます。
「将来の不安に備えるため、郵便貯金のような感覚でなけなしのお金をはたいたんです。近未来は庶民を食い物にした。許せない。国に責任がないはずがない。命を削るような被害者が出ないことを祈ります」
被害者は現在、集団提訴に向け準備をすすめています。