2006年11月26日(日)「しんぶん赤旗」
沖縄新基地
作業加速の構え
政府 次期県知事と会談へ
沖縄の米海兵隊普天間基地に代わる新基地建設問題で、次期県知事の仲井真弘多氏が今週、上京し、塩崎恭久官房長官や久間章生防衛庁長官らと会談する予定です。政府は会談を踏まえ、新基地建設に向けた作業を加速化させていく構えです。
V字案に固執
政府は、仲井真氏との会談での意見交換を受け、同氏が知事に就任する十二月十日以降のできるだけ早い時期に「普天間移設協議会」の第二回会合を開く考えです。八月末に初会合を開いた同協議会は、新基地の具体的な建設計画などについて政府と県や名護市など地元自治体が協議する機関です。
政府は、米側と五月に最終合意した、二本の滑走路をV字形に設置する新基地案(V字案)について「将来変えるとか、そういうことを考える話ではない」(外務省の谷内正太郎事務次官、二十日の記者会見)とし、協議を通じて同案の実現をあくまで図る方針です。
新基地の具体的な建設計画について日米両政府は当初、十月までにまとめる予定でしたが、沖縄県知事選後に先送りしてきました。額賀福志郎・前防衛庁長官は「間もなく、米国との間で作成してきた具体的な基本計画(マスタープラン)もできあがる」と語っており(「読売」二十一日付)、協議会で早々に提示される可能性もあります。
久間防衛庁長官は「(仲井真氏が知事に就任する十二月十日まで)行政が止まってしまっていても困るので、そういう準備を『アヒルの水かき』ではないけれど、水面下でやっていただきたい」(二十一日の記者会見)と述べ、日米両政府が作成する「基本計画」などをめぐり、県など地元自治体と事前の協議を進めていくことも明らかにしています。
仲井真氏は沖縄の地元紙のインタビュー(琉球新報二十一日付)で、普天間基地の「三年での閉鎖」を主張。新基地のV字案については「受け入れ難い」とする一方、普天間基地の「県内移設の選択肢は当然のことだ」と表明しています。また「自分たちのシナリオと少し違ったところがあっても、負担の軽減につながるのなら前に進んでいけばいい」(二十日)と述べたと各紙が一斉に報じており、対応が厳しく問われます。
「振興」アメに
政府は、新基地建設への協力の見返りとして進めてきた、名護市など沖縄本島北部向けの「振興策」(北部振興策)について、いったん二〇〇六年度限りで廃止することを決定したものの、〇七年度以降も継続する方向です。塩崎官房長官が二十四日の記者会見で改めて確認しました。「北部振興策」の継続を求めてきた県や関係自治体に、V字案を受け入れさせる「アメ」にするのが狙いです。
同時に政府は、「北部振興策」とは異なり、計画の進ちょく状況に応じて交付金を支給する「新たな交付金制度」の検討にも着手してきました。同制度は、沖縄だけでなく、在日米軍再編にかかわる全国の関係自治体を対象に計画への協力を強要しようとするものです。在沖縄米海兵隊のグアム移転経費の負担とともに、「在日米軍再編推進法案」(仮称)に盛り込み、来年の通常国会に提出することも想定されています。