2006年11月26日(日)「しんぶん赤旗」

主張

石原都知事

ここまできた都政「私物化」


 親の子への思いはいくつになってもつきません。父親なら誰でも息子のためにできるだけのことをしてやろうとするでしょう。しかし、自治体の首長が、自分の懐は痛めず、税金で行う公の事業を子息のために使うとなると話が違います。

 石原慎太郎都知事が四十歳になる画家の四男を、都の芸術関係の事業に深くかかわらせていたことが日本共産党都議団の告発で明らかになりました。「石原知事による都政私物化」(都議団)はきわめて深刻です。

補助金突出5億円

 問題の事業は「新進・若手芸術家の育成をはかる」として作品発表や交流の場の提供をしている「トーキョーワンダーサイト」(TWS)。知事の四男は一カ月間TWSの外部委員に委嘱され、ドイツ、フランスなどを訪問、その費用五十五万円余はすべて都が負担していました。知事の子息の公費海外出張です。

 それだけでなく都議団の調査で、四男はTWSが発足した当初から事業に深くかかわっていたことがわかりました。都議団の求めで提出された都の公文書に「トーキョーワンダーサイト設立に参加」と記述されていたことで裏付けられています。

 さらに四男は、米・ニューヨークで行われた公共芸術サミットにも四人の東京都「代表」の一人として参加しました。TWSの施設にあるステンドグラスの原画を描いたのも知事四男です。知事がつくった事業所の壁に、わざわざ知事の子息の作品を公費で飾っているのです。

 TWSは石原知事自身が「トップダウンですよ、私が考えついた」と認める事業です。知事の発案で都政に持ち込まれた事業に、その最初の時点から知事の子息が関与するというのは不自然です。公費出張をはじめとする数々の問題も、不当な身内の重用といわざるをえません。

 東京には、あまたの芸術家、公共芸術の専門家がいます。それなのに、なぜ知事の子息を選び、使ったのか。知事は二十四日の会見で「余人をもって代え難かったらどんな人間でも使う」と答えました。

 行政の生命線は「公正さ」の確保です。私的な財団などではなく行政が税金で行う事業であるからには、身内をかかわらせること自体避けるというのが行政の長に求められる最低限の見識です。石原氏はこんな当たり前の道理さえ見失っています。

 都のTWSへの肩入れは突出しています。文化予算を惜しむ石原都政のもとで都の文化施設への予算がのきなみ削減されるなかで、TWSだけは補助金が二〇〇二年度の五千五百万円から〇六年度の四億七千万円に急膨張しています。

 TWSは「石原知事の知己の関係」にあることを理由の一つに都参与に選ばれた人物とその妻が館長、副館長を務め、「ファミリー支配」の批判も受けています。都の承認なしに事業計画を変更するなど不明朗で乱脈な運営は都監査委員の〇四年監査報告でも厳しく指摘されました。そんな問題があっても都がTWSを優遇し続けるのはなぜなのか。「芸術振興」のお題目だけでは説明がつきません。

解明はこれから

 石原知事の豪華海外出張問題では、庶民の金銭感覚とかけ離れた浪費ぶり、税金の無駄遣いにたいする世論の怒りが沸騰しています。それに続く身内重用問題で、都民の批判がいっそう高まるのは必至です。

 知事の専横ぶりがあばかれたいま、都政の闇に切り込む、徹底した実態解明が必要不可欠です。


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