2006年11月25日(土)「しんぶん赤旗」

主張

核論議発言

国際社会での孤立深めるのか


 北朝鮮が核実験をしたのだから日本も「核兵器保有」の議論をすべきだといってきた自民党の中川昭一政調会長が、改めて議論を求める考えを明らかにしました。国内はもちろん各国からも批判を受け、今月はじめいったんは当面「発言しない」と“自粛”を表明していたものです。その舌の根も乾かぬうちに議論を再開するとは、中川氏に反省はないのか。中川氏やそれに同調した麻生外相はもちろん、任命権者の安倍首相も、責任が改めて問われます。

核放棄を迫れない

 「非核三原則(核兵器を持たず、つくらず、持ち込ませず)は認めるが、(『語らせず』を含めた)四原則は認めない」―中川氏の発言です。(二十三日、岐阜市の講演で)

 核武装はしないが、「核兵器保有」の議論は大いにやっていいという中川氏の主張は、とんでもない詭弁(きべん)です。だいたい核武装しないというなら、どんな「核保有」の議論をやろうというのか。NHKの調査でも日本が核兵器を「保有すべきだ」はわずかに8%、「保有すべきではない」が67%です。「核兵器保有」について議論の余地があるようにいうこと自体、核武装を拒否する国民世論を踏みにじるものです。

 中川氏だけでなく、麻生外相なども「(核兵器保有の)議論は大事だ」といいますが、北朝鮮の核実験に対して今やるべきは、日本が対抗して核兵器を保有するかどうかの議論ではなく、どうすれば北朝鮮に核開発をやめさせ、核兵器をなくしていくことができるかの議論です。

 日本は世界で唯一、核兵器の被害を受けた被爆国であり、世界に対して核兵器廃絶を先頭に立って訴えていく責任を負っています。核兵器をなくしていこうという立場に立って主張し行動してこそ、北朝鮮に核兵器開発の放棄を求めていくうえでもイニシアチブ(主導権)を発揮することができます。

 日本が「核兵器保有」の議論を始めることは、北朝鮮に核兵器の放棄を求める国際的大義を失わせ、この問題でイニシアチブを発揮するのを困難にするだけです。それだけでなく、日本に対する各国の疑念と批判を招き、国際社会が一致して北朝鮮に核兵器の放棄を迫るのを困難にすることになります。

 実際、中川氏や麻生氏の発言に対し、アメリカ、中国、韓国などが相次いで懸念と批判の声を上げ、この間の首脳会談や外相会談で問題になりました。中川氏がいうように「『語らせず』は認めない」といって「核兵器保有」の議論を再開していくことは、こうした国際的な批判を無視し、逆らうことになります。

 中川氏は、日本が「核兵器保有」の議論をすること自体が北朝鮮への圧力になるようにいいますが、国際社会の団結を妨げてどうして北朝鮮の核開発に対抗できるのか。北朝鮮に核兵器を放棄させるのに役立つどころか、日本を国際的な孤立に導くだけになるのは明らかです。

首相の責任が問われる

 中川氏らの「核兵器保有」議論に対し、自民党の二階俊博国対委員長は先に、「誤解を招きかねない発言を何度もすると、任命権者の責任が問われることになりかねない」と発言しました。実際には自民党も安倍首相も、中川氏や麻生氏をかばい、辞任要求を拒み続けました。

 中川氏が議論を再開するとなると、それではすまされません。安倍首相が責任を問わないなら、首相自身の任命権者としての責任が問われるのが免れなくなります。


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