2006年11月24日(金)「しんぶん赤旗」
中印首脳会談
世界の多極化示す
民生用核協力に驚きも
21日、当地で行われたインドのシン首相と中国の胡錦濤国家主席の首脳会談は、2国間とアジアの地域協力の拡大の重要性を強調しました。現在の国際政治・経済が、米国一極化を脱し、多極化していることを示しています。(ニューデリー=豊田栄光 写真も)
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「共同宣言」では、自らを「多極化する世界秩序の中の二大国」と位置づけ、「(両国関係の発展が)将来の国際システムに肯定的な影響をもたらす」と、国際政治・経済におけるパワープレイヤー(力のある国)としての自信を示しました。
外交関係では首脳会談の定例化や領事館の増設などを決め、十三の合意文書が署名されました。経済関係では二〇一〇年までに年間の貿易額を四百億ドルに引き上げる目標で合意しました。
現在の両国間の貿易額は二百三十億ドルです。数年間でほぼ倍増という高い目標です。インドの二国間貿易を見ると、欧州連合(EU)が四百六十億ドル、米国が二百五十億ドル、日本が六十億ドルとなっています。
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両首脳は「アジアでの地域協力をより緊密にする」ことで一致し、東アジア共同体実現に向けて取り組むことでも合意しました。
アジアの地域協力組織の役割にも注目し、「共同宣言」では、東アジア首脳会議(EAS)、南アジア地域協力連合(SAARC)、アジア欧州会議(ASEM)、上海協力機構(SCO)を列挙しました。米国が正式加盟国の組織は一つもありません。
中国が二国間関係の強化を図ろうとすると、必ず出てくるのが「中国脅威論」です。胡錦濤主席は二十二日、ニューデリーで演説し、「中国は南アジアで利己的な利益を追求しない」、「相互信頼を促進し、将来のために新しい道を指し示す」と主張しました。
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首脳会談の事前報道では、サプライズ(驚き)はないとされてきました。しかし、民生用の核技術協力で予想外の合意がありました。共同宣言は、「国際的な民生用核協力は国際的不拡散の原則を守って進められるべきだ」(共同宣言)と強調しました。
インドは核不拡散条約(NPT)に加盟せず、核兵器保有国となりました。このため原子力供給グループ(NSG=四十五カ国)は、ウランなどの核燃料、原発などの核技術のインドへの輸出を制限しています。
インドはNSGの制限措置の解除を求めていますが、国際的な同意はまだ得られていません。地元紙は「中国はインドの行く道をさえぎらない」(英字紙ヒンズー)などと、中国が制限解除を事実上認めたととらえています。
中印共同宣言
大要
中国の胡錦濤国家主席とインドのシン首相が二十一日、ニューデリーでの首脳会談後、発表した「共同宣言」の大要は次の通りです。
一、インドと中国は世界のなかでいずれも最大の発展途上国であり、両国間の関係は地球的規模や戦略的にも意義がある。互いの発展がアジアと世界の平和、安定、繁栄への積極的な貢献になると考える。両国が共に発展する明るい展望があり、われわれはライバルや競争相手でもなく、互恵のパートナーである。
一、首脳会議を定期的に開き、政府、議会、政党の高いレベルでの交流が全般的な両国間関係を拡大するうえで重要な役割を果たすと合意した。
一、両国間の経済や商業での包括的な取り決めが、戦略的協力的パートナーシップの核心的要素である。
一、国境問題を含む未解決の問題は、平和的方法を通じ、公正で合理的、相互が受け入れられる積極的なやり方で解決することを誓約する。
一、民生用核エネルギー計画の拡大がエネルギーの安全保障を確保する国家エネルギー計画にとって欠かせない重要な要素であると考え、核エネルギー分野での協力をそれぞれの国際的な誓約に基づき促進する。
一、アジア太平洋と世界で出現している安全保障の環境について定期的な意見交換をおこなう。緊急かつ出現する関心事について積極的に協議を引き受け、当事者たちの立場と協力しながら問題の平和的解決に積極的な貢献をする。
一、国際的な民生核協力は、国際的不拡散の原則を守りつつ、革新的で前向きな取り組みを通して、進められるべきである。
一、地域統合が国際的な経済秩序のなかで出現しつつある特徴であると考え、地域組織内での協力を広げ、アジアでのより緊密な協力のための新しい構成を探求する。東アジア共同体への進展を含むアジアの地域間協力の過程へ積極的に参加する。(宮崎清明)