2006年11月24日(金)「しんぶん赤旗」

主張

来年度予算編成

福祉からの排除ストップを


 財政制度等審議会(財務相の諮問機関)が来年度の予算編成についての建議(意見書)を発表しました。

 建議は、失業給付の国庫負担の全廃、生活保護の母子加算・児童養育加算の廃止を求めています。

 国民のくらしを守り、社会保障を向上させる国の義務を定めた憲法二五条をますます踏みにじり、国の責任をいっそう後退させる内容です。

生活保護を削減し

 財政審は雇用保険の収支が改善したから国庫負担の必要はないとしています。財源があるなら、欧州諸国に比べて短い給付日数の拡充や、失業給付が切れた後の生活扶助、職業訓練の抜本的充実など、やるべきことはたくさんあります。

 生活保護は、小泉内閣による老齢加算全廃に続く「加算」の廃止です。おおもとの扶助額が低いことに配慮した措置をなくすことは、社会的に弱い立場に置かれた家庭のいのちを削る冷たいやり方です。

 財政審では国民年金の受給額は生活保護より低いから扶助基準を引き下げるべきだと議論されています。生活の保障に程遠い年金額こそ問題であり、それに生活保護の水準を合わせるのは本末転倒です。生活保護は生活を保障するための制度です。その根幹を忘れて低きに合わせることは憲法に基づく生活保障制度そのものを葬り去るに等しい暴論です。

 必要がないのに保護を受ける「モラルハザード」を防止するため、などという議論も出ました。実際には政府の抑制策の影響で生活保護の申請をあきらめたり、申請に行っても窓口で追い返される事例が多発しています。福祉からも排除された人たちが、餓死や自殺に至る痛ましい事件が相次いでいます。モラルハザードを起こしているのは、いのちを守るはずの福祉が人を死に追いやる悲惨な事態を生んだ政府の側です。

 財政事情は削減理由になりません。生活保護の受給が過去最高の百万世帯に及ぶほど急増しているのは、弱肉強食の「構造改革」が貧困を大きく広げてきたからです。生活保護費の増加は政府の責任です。

 何より安倍内閣は、とどまるところを知らない財界の身勝手な要求に従って、大企業の大幅減税に踏み切ろうとしています。財界には大盤振る舞いの一方で、財政を理由に福祉を削るのは国民を欺く議論です。

 建議は財政健全化が最大の成長政策の一つだとのべています。財政審部会でも「防衛費は一兆円ぐらいは減らせる」と発言がありました。軍事費や大型公共事業の無駄を削って、くらしに必要な分野、生活関連の公共事業に回すという本来の財政改革を実行すれば、経済にもプラスになります。しかし政府のやり方は無駄遣いを続け、くらしに必要な予算を削る逆立ちです。経済に大きなマイナスです。

社会保障を変質させ

 財政審と並行して経済財政諮問会議では財界代表ら「有識者議員」が「抜本的な社会保障改革」を提案しました。従来の「必要に応じた」給付原則から「負担可能な範囲内」の給付原則への転換を掲げています。

 「必要に応じた」とは不足を充足させる保障の理念です。それをやめるのは、憲法に基づく生活保障の制度である社会保障を根本から変質させることにほかなりません。

 小泉内閣の「構造改革」を受け継いだ安倍内閣は、社会保障を根本的に変質させる新たな段階に踏み込もうとしています。その第一歩となる来年度予算の編成を厳しく監視し、これ以上の社会保障改悪を許さない世論を結集してたたかいましょう。


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