2006年11月23日(木)「しんぶん赤旗」
石原知事ちゃっかり都政私物化
肝いり事業 ワンダーサイト
石原慎太郎東京都知事の「トップダウン」で始めたトーキョーワンダーサイト。日本共産党都議団が22日発表した、知事の息子や知人を深く関与させた都政私物化の実態は――。
その1 なぜサミット代表に
石原知事の四男、延啓(のぶひろ)氏は二〇〇五年二月、ニューヨーク市で開かれた都市による公共芸術の振興策について話し合うパブリック・アート・サミットに、四人出席した東京都の代表の一人として参加していました。
事前に都側がニューヨーク市に送った延啓氏の紹介文には「トーキョーワンダーサイト、キュレーティングアーティスト」(キュレーター=美術館などの館長、学芸員、展覧会の企画立案・組織者)「トーキョーワンダーサイト設立に参加」と書かれています。
ところが、開示資料には、延啓氏とともに都の代表として参加した都の担当課長とワンダーサイトの今村有策館長、その妻、家村佳代子氏を決めた事実はありますが、延啓氏を代表と決めた文書はありませんでした。
いったいだれが、どういう理由で一民間人である延啓氏をニューヨークへの代表に選んだのか、トーキョーワンダーサイト設立に参加させたのか、やみの中です。
その2 税金使って海外出張
延啓氏は、公費を使って海外出張にも行っていました。
〇三年三月十八日から二十六日にかけてワンダーサイト事業の「能オペラ」実施のための調査として、「トーキョーワンダーサイトコミッティ・アドバイザリーボード委員」(諮問委員)の名で、五十五万円の公費を使ってドイツ・フランスに出張したのです。
「能オペラ」は、もともと石原知事自らが脚本を担当するものとして計画され、それがワンダーサイトの事業となったものでした。
その3 四男の作品展示
ワンダーサイトの玄関と二、三階に飾られているステンドグラスの原画作者は、延啓氏でした。知事肝いり事業の建物の壁に、知事の息子の作品を都のお金を使って飾っているのです。このことは、都民にも都議会にも知らされていません。
その4 館長とは知己の仲
建築家で、文化芸術での実績が特段見られない今村氏が、なぜワンダーサイトの館長に就任したのかも不明朗です。
館長に任命された日は、同氏が東京都参与に任命された日と同じ〇一年十二月二十日。支払われる給与は、合わせて月額六十六万三千円です。開示した参与の選任理由の欄には「石原知事の知己の関係にあり」と記されています。
今村氏が、延啓氏をワンダーサイトの設立から今日まで深くかかわらせていることから見ても、石原知事の「知己の関係にある」今村氏をワンダーサイト館長に起用した背景が浮かび上がってきます。
その5 館長がファミリー支配
ワンダーサイトは、〇五年十月に韓国光州市で行われたシンポジウムなどを調査していますが、この調査を今村氏の妻である家村佳代子氏に委託し、同氏を出張させています。
さらに、〇六年四月からは、家村氏をワンダーサイト青山館の館長とワンダーサイト副館長に採用。ファミリー支配を象徴しています。
自らトップダウンで始めた都の事業に、なぜ自分の家族や知人の今村夫妻を深くかかわらせているのか――石原知事は、その全容を明らかにする責任があります。
トーキョーワンダーサイト 新進・若手芸術家の育成を図るとして二〇〇一年十二月、文京区本郷の教育庁所管の御茶ノ水庁舎を改修してスタートしました。その後、ワンダーサイト渋谷、同青山を開設。さらにもう一施設の開設を予定。〇四年度の都の監査では、事業をチェックするために設置されたコミッティ委員会が年一回しか開かれず、事業計画の決定や決算の認定が審議されないまま委員長の決済だけで処理されていることや、都の承認なしに事業の変更が行われ、事業計画と実際執行された内容も金額も大きく違っていることなどの問題が指摘されています。