2006年11月22日(水)「しんぶん赤旗」
健康保険料アップも
政管健保再編で都道府県格差
給付抑制競わす
中小企業の従業員などが加入する政府管掌健康保険(政管健保)が、国の運営を離れて都道府県ごとに再編され、保険料率に「格差」がつけられる――六月に成立した医療改悪法にもとづき、国の責任を大幅に後退させる政管健保の大改変が進んでいます。厚生労働省は十四日に二〇〇八年の実施に向けて新組織づくりの初会合を開くなど具体化をはかっています。
医療改悪法具体化へ
政管健保は日本最大の健康保険(約三千六百万人加入)で、国(社会保険庁)が財政運営をしています。
改悪法では、国の運営から切り離し、〇八年十月に全国単位の公法人「全国健康保険協会」を設立。都道府県単位でつくる同協会の支部が新しい健康保険を運営することになります。
加入者(被保険者)が支払う保険料率が大きく変わります。現行は、全国一律の保険料率で収入の8・2%(これを労使折半)です。
これを厚生労働省は「都道府県ごとに地域の医療費を反映した保険料率を設定する」「都道府県単位の財政運営を基本とする」として、保険料率に格差をつけます。医療費が多くかかっている都道府県は保険料率を高くする仕組みです。
厚労省が〇三年度の医療給付費等の実績をもとに各都道府県ごとの保険料率を試算したところ、最も高いところは北海道の8・7%、最も低い長野県の7・6%と差がつきました。
さらに法改悪で、これまでの保険料率の上限(9・1%)を10%まで引き上げました。国会審議のなかで厚労省は10%になると、保険料は年間七万円以上アップし、約三十八万五千円になると認めました。
制度改変の狙いは、医療給付費(保険からの給付)の抑制を都道府県に競わせることにあります。厚労省は、医療費「適正化=抑制」のために、地域での「生活習慣病対策」の推進や、平均在院(入院)日数の短縮などをあげています。
“平均在院日数が長いと医療費が高くなり、保険料率も上がるから問題だ”として、患者の病院追い出しを強めることになりかねません。
十四日に開かれた全国健康保険協会設立に向けた初会合では、委員からも「都道府県別の保険料率には期待と不安がある。被保険者の理解が得られるのか」という声があがりました。