2006年11月21日(火)「しんぶん赤旗」
学力テスト実施で点数競争
東京・江戸川 区教委が“宿題”
学校現場は混乱
プリント増刷2万枚も
学力テストの結果が自治体別に公表され、区市町村が点数競争をさせられている東京都で、江戸川区の教育委員会が「学力向上」のためとして、全区立小中学生を対象に二週間にわたり“宿題”を出しました。事実上、学校の指導計画を無視した形で行われたため現場は混乱。「宿題は教師が子どもの実態に応じて出すもの。上から押しつけるやりかたはおかしい」との批判が出ています。
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同区教委は「学ぶ意欲、日常的な学習習慣の定着」を目指すとして十月十六日から三十一日を「家庭学習キャンペーン週間」に設定。「家庭学習シート」を作成し、全小中学生に家庭でやらせるよう学校に求めました。
小学生用は国語と算数、中学生用は国語・数学・英語の問題がプリントされ毎日一枚やるとされています。解答が添えられ、子ども自身や親が答え合わせをするようになっています。
区教委指導室は「各学校で実情に応じて工夫して活用してほしいというもので、強制するものではない」としています。しかし、学校にはシートの活用状況を報告することを求めています。同指導室は「ほとんどの学校が活用した」といいます。
各学校は直前に届いたシートの原本を子どもの数だけ増し刷りしなければなりませんでした。「うちの学校は約七百人なので、全部で二万枚以上の印刷を大急ぎでやらなければならず大変な騒ぎでした」とある小学校の教師(54)はいいます。
学校では通常、各担任がそれぞれの授業計画や子どもの実態に応じて宿題を出しています。そこに突然、区教委からの“宿題”が持ちこまれました。やむをえず通常の宿題に加えて「シート」をやらせた教師もいれば、「シート」をやらせるために、計画していた宿題を中止せざるをえなかったという教師もいます。
区内の別の小学校教師(42)は「江戸川区は学力テストの結果が悪かったので、あわててこういうことをしたのかもしれませんが、こんなやり方はおかしい」と語ります。
「シート」の問題も、まだ九九を習っている途中なのに掛け算が出ているなど、実態にあっていないものがありました。
先の教師は「教師は日々の子どものようすや授業の進みぐあいをみながら、宿題を出します。区内の子どもが毎日いっせいに同じ問題をやるということ自体、異常なことです。このようなことをやっても子どもの学力向上にはつながりません。学校や教師のとりくみを信頼して、それを支えるのが行政の役目のはずです」と語っています。