2006年11月19日(日)「しんぶん赤旗」

米大統領 アジア政策演説

この地域に関与し続ける


 ブッシュ米大統領は十六日、アジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議への出席を前にシンガポールでアジア政策について演説しました。大統領はこのなかで「米国はアジアに関与し続ける。われわれの利益は、この地域で自由と機会が拡大することにかかっているからだ」と改めて表明し、発展するアジア諸国との経済関係の拡大をめざして、域内の貿易の自由化をいっそう推進する方針を説明しました。(ワシントン=山崎伸治)

 ブッシュ氏は演説で、エネルギー開発や疫病(SARS、エイズ)対策、災害復興支援などの分野をあげ、「米国にはアジア太平洋地域の諸課題に明確な対応策がある」と指摘。「必要なのは協調であって、家父長的干渉主義ではない」と述べながら、「国民の繁栄と健康、機会の増進に努力する国が手近に見いだす相手は米国だ」とアジアの「良きパートナー」としての米国を前面に押し出しました。

 安全保障の分野ではテロ対策を第一にあげ、「最大の危険はテロリストが大量破壊兵器を手にするかもしれないことだ」と指摘。北朝鮮からのミサイルや核兵器、関連技術の拡散が「最も差し迫った脅威」だとして核開発を容認しない姿勢を強調しました。北朝鮮にたいして六カ国協議に復帰して核放棄に具体的行動をとるよう求めました。

 アジア太平洋地域での軍事協力については、日本や韓国、オーストラリア、フィリピン、インドなどとの二国間同盟・協力関係とともに多国間協力の強化を表明。東南アジア諸国とのマラッカ海峡警備や大量破壊兵器拡散防止構想(PSI)などをあげました。

 一方で今回の演説は、同じAPEC首脳会談の機会に行ったものとしては、昨年の京都での演説ときわだった対照を見せました。京都演説では、中国などを念頭に「自由と民主主義」を世界に広めるという立場が繰り返し強調されました。

 その演説と変わり今回は、「自由」と「民主主義」への言及回数は、昨年の計六十六回から今年の計十四回へ激減し、後景に退いた印象を残しました。

 「民主主義を推進するというブッシュ氏の美辞麗句もアブグレイブやグアンタナモ(の収容所)の写真に比べれば、説得力はない」―クリントン政権で国防副次官補を務めたジョゼフ・ナイ氏が、APECを前にアジアの主要紙に寄稿した論評の中で指摘しています。イラクをはじめとする「対テロ戦争」の矛盾が米国の外交政策全体にも影を落としていることが明らかになっていると言えます。


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