2006年11月19日(日)「しんぶん赤旗」
厚労省が虚偽報告 食品安全委員会に
米産牛肉の輸入条件違反
業者の通報 発表遅らす
輸入を再開して三カ月余りたった米国産牛肉から、日本の輸入条件に違反する部位が見つかった問題で、十月三十日に業者から通報があったにもかかわらず、厚生労働省が今月二日に開かれた内閣府食品安全委員会に「違反事例は確認していない」とうその報告をしていたことが十八日までにわかりました。消費者団体から「食品安全委員会を軽視している」「違反の隠ぺいは重大」と批判の声があがっています。
問題の違反は、厚労省と農水省が今月八日に公表。農水省動物衛生課によると、十月三十日に輸入業者からの通報で発覚していました。
出荷元は、米国コロラド州にあるスイフト社グリーリー工場で、計七百六十箱(十一トン)のうちの一箱が、「対日適格リスト」に記載されてない製品(胸腺)でした。米政府が発行した衛生証明書には記載がなく、「明確な対日条件違反」(厚生労働省監視安全課)。胸腺はBSE(牛海綿状脳症)危険部位ではないものの、日米間では輸入できない部位になっています。ことし一月二十日に発覚した危険部位の背骨の輸出と同様、対日条件順守にかかわる米政府の輸出証明のずさんさを示す重大な問題です。
ところが、厚労省は二日の食品安全委員会で、「米国産牛肉の輸入手続再開後の状況」について「違反事例は確認されていない」と報告していました。
同省は「知っていたが、確認中だったため。隠したわけではない」と釈明。農水省は「(衛生証明書と)対日適格リストにない製品を輸出した米政府に、調査と報告を要請しているが、(十七日現在)回答はない」としています。
食の安全・監視市民委員会(神山美智子代表)と日本消費者連盟は十八日までに、「リスト作成とその順守は重要視された対策」で「ずさんな事件」と松岡農水相、柳沢厚労相に抗議文を提出。「(十月)三十日に発覚していたにもかかわらず、国内の消費者には一週間以上も発表されておりません」「消費者の不信を募らせる」と、両省の態度を批判しています。
輸入停止が必要
日本共産党の紙智子参院議員 米国産牛肉の安全性に構造的問題があることは、日本向け米国食肉処理施設のBSE違反記録をまとめた『ノンコンプライアンス・レコード』(紙智子事務所編、合同出版)で明らかにしました。今回の「適格リスト違反」は、そのことを実証したといえます。日本と同じ安全性の確保がなされないままでは、米国産牛肉の輸入はストップすべきです。