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2006年11月18日(土)「しんぶん赤旗」
印パ和平協議を再開
越境テロ対策へ新展開
【ニューデリー=豊田栄光】七月に中断したインドとパキスタンの包括和平対話が、十四、十五両日のニューデリーでの外務次官協議で再開されました。両国は「テロ対策機構」の創設を決め、パキスタン側に拠点を置くイスラム過激派のインド側への越境テロについても協議していくことになりました。
「テロ発生の要素はパキスタンにある。だれが越境テロに関与していようとも、私たちはこれとたたかう」「テロ対策は包括和平対話の重要な一部だ」―インドのメノン外務次官は協議終了後の記者会見で、こう強調しました。
包括和平対話は二〇〇四年一月の首脳会談で合意し、同年二月から開始されました。印パ両国は一九四七年の独立以降、カシミール地方の領有権を争い三度の戦争を経験しました。
包括和平対話はカシミールだけではなく、他の未画定領土問題、安全保障、経済協力など八項目が協議対象です。この中には、「テロ撲滅・麻薬密輸取り締まり」という項目もありますが、今回あえて「テロ対策機構」を新設したのは、越境テロ問題を避けていては実のある対話は困難になっているからです。
七月にインド西部の商都ムンバイで発生した列車爆破テロを受けて、包括和平対話が中断しました。インド捜査当局は、パキスタンのテロ組織とパキスタン軍が関与した越境テロと断定、証拠もあるとパキスタン政府を非難しました。
メノン外務次官は記者会見で、パキスタン領内にテロリスト訓練施設は「存在する」、「彼ら(パキスタン政府)は承知していると思う」と言い切りました。パキスタン政府はテロ組織への軍の関与は認めていません。
包括和平対話が始まった直後、「越境テロ」は腫れ物、禁句のような言葉でした。インド政府も使用を控えていました。「使えば対話に支障が生じるとの懸念があった」(インド外務省関係者)といいます。
パキスタンのカーン外務次官は、今回の協議を「率直で建設的だった」と評価しました。双方が越境テロ対策の必要性を認め合い、特別の協議の場を設置したことは、包括和平対話を進めていく両国の意欲を示したもので、肯定的な新展開といえます。
インドの英字紙インディアン・エクスプレス十六日付は「テロには共に」との社説を掲載、テロ対策機構は「印パ和平の進展の最重要部分になるだろう」と称賛しました。