2006年11月17日(金)「しんぶん赤旗」

日本共産党東京都議団

「石原知事の超豪華海外出張の浪費の実態について」(上)


 日本共産党東京都議団が十五日発表した「石原知事の超豪華海外出張の浪費の実態について」全文を上下で紹介します。


 知事の公費を使っての海外出張は、ほんらい、都民の納得を得られる目的と費用でおこなわれる必要があります。ところが、石原知事の海外出張の多くは、目的の点でも費用の点でも、とうてい都民の理解を得られるものではありません。

 日本共産党都議団は、かねてから都民の批判のつよい石原知事の海外出張について、関係文書など(うち、七回は情報開示請求に基づく資料)から調べました。その結果、都民の税金の浪費ともいうべき実態が明らかになりました。ここにその内容を、都民のみなさんに報告するものです。

一、石原知事の海外出張のほとんどは、莫大な税金を使ってやる意味はないもの

 石原知事は就任以来、十九回の海外出張をおこないました。公表された出張の目的は、調査・視察、会議出席、会談、講演などです。共通していることは、ほとんどは各局で事前に積み上げられたものではなく、知事の個人的関心にもとづいてトップダウンで計画されたものです。このことは、十九回の出張中実に六回が、石原知事の思い入れの深い台湾であることが端的に示しています。台湾出張の理由は、総統就任式出席が二回、観光資源視察が一回、政府・自治体関係者との会談が一回、地震被災地調査が一回、アジア大都市ネットワーク21出席が一回です。この間、スマトラの津波被害など、世界各地で地震やハリケーンなどによる大被害がたくさん発生していますが、台湾以外に行ったことは一度もありません。

 また調査・視察は、自治体本来の役割である福祉や教育の充実を目的としたものは皆無であり、オリンピック、マラソン、観光などにかたよっています。全体として、事前調査(相手方への調査依頼、文献調査、インターネット検索)などで足りるものが多く、わざわざ知事が莫大(ばくだい)な費用をかけていく必要性は、きわめて乏しいものです。

 アメリカやヨーロッパ出張では、毎回のように「文化施設視察」をおこなっています。しかし、これらの視察は、当初の出張目的にも入っていなかったものも多いうえ、都の施策にこう反映するという報告もなく、知事自身の個人的観光だと言われてもしかたないものです。

 「会談」「会議」の多くは非公開で、報告書や資料がないため成果を検証するすべがありません。「講演」については、石原知事に対する依頼だとされていますが、都知事としての講演なのか、石原氏個人としての講演なのかを明らかにして、費用負担を厳正にすべきです。たとえば、二〇〇一年九月にハドソン研究所に夫妻が招かれて講演をおこないました。しかし、そのときの知事の講演の内容は、開示資料で見る限り、特定の国の批判に終始しており、とうてい東京都を代表しての講演とはいえないものです。以下の四つの事例で見るといったい、こうした海外出張をくりかえしていいのかどうか、答えが明白にでてきます。

ガラパゴス視察は、典型的観光旅行にすぎない

 〇一年六月のガラパゴスへの十泊十一日の視察は、公式には「エコ・ツーリズム」などの視察が「目的」とされましたが、典型的なツアー観光旅行コースを楽しんだにすぎないといっても過言ではありません。この視察で石原知事は、エクアドル政府主催の昼食会や日本大使主催の夕食会などに出たほかは、三十八万円かけて小型クルーザーを一日借り切ってのクルージングを楽しみ、二百六万円かけてホテル並みの施設を備えた大型クルーザーで、四日間のクルージングと諸島見物をおこなったのです。大型クルーザーで知事が宿泊したバルコニー付き最高級の部屋の料金は、五十二万四千円。特別秘書二人の部屋代も八十七万二千円もかかりました。

 エコツーリズムについていえば、環境局は、以前から国内外の調査・検討をおこなってきたものです。この出張についての報告書を読んでも、この域を出ておらず、わざわざ莫大な費用をかけて知事が行く必要があったとは到底いえません。なにしろ、知事自身、「(都議選の応援が)面倒くさいからガラパゴスに行っていた」(「朝日」〇五年二月四日付)と告白しているのです。

アメリカのレッドウッド、グランドキャニオン国立公園視察も観光。夕食会、昼食会、レセプションなどのオンパレード

 〇四年六―七月のアメリカの国立公園への出張は、「知事自らが自然資源の保護の徹底、充実した来園者サービス施設、利用者からの寄付等の現状を現地調査することが必要不可欠」としておこなわれたものです。これに知事夫人まで同行しました。しかし、やったことは、グランドキャニオンでは、二日間、車で回り、レンジャー養成学校を見学し、公園長主催レセプションに出席したこと、レッドウッド国立公園でも、二日間、車で回り、公園長主催昼食会に出席した程度にすぎません。実際、この出張の報告書は、現地に行かなくてもインターネットや文献調査で調べがつくことが大半であり、知事出張の一番の目的であったパークレンジャー制度も、出張時にはすでに都として制度化されていたものです。

 サンフランシスコ、ロサンゼルスにも行きましたが、そこでの行動は、総領事の夕食会やテレビ放送局との昼食会、現地日系企業団体との懇談会への出席、美術館の見学などです。地元日本語テレビ局での講演もおこなったとされていますが、その内容も明らかにされていません。知事が税金を使って出張した以上、せめてその内容を明らかにすることは、都民にたいする最低限の責務です。

ロンドンでのオリンピック調査は、実質たった1時間半程度

 〇六年五―六月におこなわれたロンドン・マン島の出張の目的は、オリンピック招致方策等調査・視察、マン島観光施策調査・視察等とされています。しかし、オリンピック調査で、知事がおこなったことは、オリンピック準備庁との会談が四十七分と、八十八万円かけたヘリコプターによる視察三十分程度です。知事自身がロンドンのオリンピック計画を調査したとは、到底いえません。

 東京都の島しょ地域におけるオートバイレース開催のための調査であるマン島視察も、開催するのは島の自治体です。しかも、島でのオートバイレースがうまくいくかどうかのマーケティング調査もおこなっていない段階で、知事がなぜマン島にまで行く必要があるのか疑問です。この出張は、全体で四千万円近いお金を使って行く意義があったとは思えません。

収穫について聞かれ、「パーティーが大盛況」と答えたスイスのダボス、フランスのパリ出張

 〇四年一月におこなわれたダボス・パリ出張の目的は、世界経済フォーラム年次総会(ダボス会議)出席と、パリの文化事業視察です。ダボス会議出席の目的は「『千客万来の世界都市・東京』の実現に向け、知事自ら各国政府、地方自治体、経済界、学会などの世界のトップリーダーと率直な意見交換をおこなう」とされています。しかし開示請求資料で見る限り、正式に招待されたかどうかは明らかではありません。記者から収穫について聞かれると、〇一年の同会議でも「つまらない」と答えた石原知事は、今回も、三百四十万円かけて開いた「トウキョウナイト」というパーティーが「大盛況だったことくらいだ」(「朝日」〇四年、二月三日付)というありさまです。パリで一日かけての騎馬劇団見学も、当初目的になかったもので、知事の個人的な興味のためのものという疑問が残ります。

(つづく)


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