2006年11月15日(水)「しんぶん赤旗」
いっそうの市場開放を
日米財界人会議が要求
日米の大企業が両国の経済連携協定(EPA)締結の要求を強めています。世界第一と第二の経済大国が経済統合を深め、「貿易自由化のモデルを確立する」(日米財界人会議共同声明)といいます。同時に、協定のために、米国企業が日本で活動しやすい環境をつくるよう「構造改革」を求め、農家保護の撤廃などをねらっています。
日米EPA求め
十二、十三の両日、東京都内で開かれた第四十三回日米財界人会議は、昨年に続き、日米EPAの早期検討開始を両国政府に求めました。在日米国商工会議所が九日発表した「ビジネス白書」も「日米経済統合協定(EIA)」の検討を日本政府に促しています。いずれも、関税撤廃だけでなく、サービス貿易の自由化、投資の規制緩和、知的財産権保護での協力といった構想です。
北城恪太郎・経済同友会代表幹事は財界人会議で、「外国企業が活動しやすい環境」を整えることが競争力強化につながると述べ、「経済連携協定と自らの構造改革をリンクさせて積極的に(日本が)市場開放する」ことを強調しました。
日本農業やり玉
同会議で、日米EPA実現の“障害”として何度もやり玉に挙げられたのが日本の農産物に対する価格保障政策です。北城氏らは、小規模農家の保護をやめ、食糧自給率の向上という考え方自体を捨てることを主張しました。
来賓として演説したシーファー駐日米大使は、日米EPAを進めるためには「日本側が農業についてこれまでと違うやり方をしてほしい。補助金でなく直接支払いに変えていただけたら米国も交渉の用意がある」と述べました。
同会議は、このほか医療、金融、労働法制などでも米国企業が活動しやすい環境を日本に求めました。いずれも国民の生活に大きな影響を及ぼすことになる事柄です。
日米EPAやEIAは、小泉前政権時の「成長のための日米パートナーシップ」を発展させたものと位置づけられています。「パートナーシップ」では、両国政府が毎年要望書を交換し、実行状況を点検する仕組みがつくり上げられました。日米の大企業の代表が政策の検討に加わることも制度化されました。これをさらに全面的なものに広げようということです。
日米EPAの要求に対して、日本政府はいまのところ「真剣に受けとめる」(麻生外相)と述べるにとどまり、公式な検討開始にゴーサインを出していません。ただ、安倍首相は政権公約で「経済分野でも同盟関係を強化」するとしており、「世界のなかの日米同盟」(昨年六月に日米首脳会談で発表した共同文書)を経済でも進めていく考えです。(山田俊英)