2006年11月15日(水)「しんぶん赤旗」

GDP「成長」

大企業 空前の利益 低迷にあえぐ家計

「好調さ」波及せず


 「順調な景気回復が続いている」。尾身幸次財務相は14日、7―9月期の国内総生産(GDP)速報の発表をうけ、こう語りました。実質、名目ともに前期比0.5%「成長」となった日本経済。GDP速報からは、空前の利益を誇る大企業の影で、低迷にあえぐ家計の姿が浮き彫りになります。(山田英明)


個人消費は失速

 個人消費は実質、名目ともに前期比0・7%減と落ち込みました。政府が、二〇〇二年二月から始まったとしている今回の「景気回復」局面のもとで最大の落ち込みとなりました。

 一方、大企業はバブル期を超える空前の利益をおう歌しています。

 新光証券のまとめ(十三日現在)によると、東証一部三月期決算企業七百六十五社の九月中間決算の経常利益は前年同期比で12・4%増。実績が増加した企業は全体の64・1%に達しています。

 なかでも自動車、電機などの輸出産業を中心に業績が拡大。トヨタ自動車は、九月中間期の本業のもうけを示す営業利益が一兆九百三十四億円(連結業績予想)と、中間期で初めて一兆円の大台にのせました。電機では、薄型テレビの海外販売が好調だった松下電器産業などが増収増益となりました。

 こうした結果、今期のGDP速報は、輸出が実質前期比2・7%増(名目同4・8%増)と大幅に増加しました。

 輸出の「好調さ」が経済「成長」をけん引しています。

 企業の「好調さ」は家計の「好調さ」に結びついていません。

賃金の低迷続く

 企業による空前の利益は、徹底したリストラや労働者の非正規化に支えられてきました。こうしたもとで、労働者の給与所得は依然、低迷しています。

 民間給与実態統計調査(国税庁)によると、給与総額は一九九九年以来〇五年まで七年連続で低下。九月の勤労者世帯の実収入(家計調査)は前年同月比で実質0・5%減(同名目0・3%減)となりました。

 労働者の賃金低迷が消費を押し下げ、さらに、政府による増税と社会保障改悪がこれに拍車をかけています。

 今年六月から住民税の定率減税が半減され、多くの国民が増税になりました。公的年金等控除の縮小、老年者控除の廃止、低所得高齢者の非課税限度額の廃止は、五百万人以上に及ぶ高齢者に増税を押しつけ、その影響は介護保険料や国民健康保険料の値上げに及んでいます。

逆立ちした政策

 〇七年には所得税・住民税の定率減税全廃が待ちうけています。政府は、落ち込んだ家計にいっそうの痛みを押しつけようとしています。

 尾身財務相は、「企業部門の好調さが家計部門に波及し、民需に支えられた景気回復」と今期のGDP速報を分析。さらに、企業が国際競争力を得るために法人税減税が「検討課題になる」とも述べました。

 GDP速報に対する政府の見方にも、落ち込んだ家計には目もくれず、大企業をより優遇しようとする政府の逆立ちした姿が示されました。

 国民が景気回復を実感するためには、空前の利益をあげる大企業にもうけに応じた負担を求め、落ち込んだ家計をあたためる政治こそ求められています。

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