2006年11月15日(水)「しんぶん赤旗」

主張

GDP消費低迷

家計を財界の犠牲にするな


 内閣府の速報によると、七―九月期のGDP(国内総生産)は実質0・5%増(年率換算で2%増)となりました。四半期で見ると七期連続の増加です。しかし、その内容には、小泉内閣から安倍内閣に引き継がれた、異常な大企業中心主義のゆがみがくっきりと表れています。

 家計消費は年率で3%減と、今回の「景気回復」局面で最大の落ち込みです。その一方で、大企業を中心にした設備投資と輸出は、それぞれ年率12%増、11・2%増の大幅なプラスとなっています。

大企業に所得吸い上げ

 GDPの過半を占め、民間需要の最大の柱である家計消費は、戦後最長の「景気回復」といわれるなかで、本格回復には程遠い底ばいを続けてきました。大企業は過去最高の利益をあげているにもかかわらず、家計消費の伸びは過去の「景気回復」期のなかで最低です。

 天候不順など、ときどきの家計消費の変動要因はさまざまです。問題は、家計の所得が一貫して低迷していることです。今回の消費の落ち込みについて、大田弘子経済財政相は、「背景として一人当たりの賃金が伸びていないことがある」とのべ、所得低迷の影響を認めました。一人当たりの賃金は、とりわけ中小規模の企業で大きく低下し、全体としても減少傾向が続いています。

 経済財政諮問会議(二日)でも次のような発言が出ています。「今回の景気の特徴は賃金がなかなか上がらないことだ」「企業から家計への所得移転に思いをはせてほしい」。賃金の低迷から目をそむけ続けるわけにはいかなくなっています。

 この日の諮問会議で財界は、「企業が成長を続けて収益を上げていけば従業員の所得アップにつながる」(丹羽・伊藤忠会長)と、従来の主張を繰り返しました。安倍首相は、企業収益が個人に移転しているデータをそろえてもらえれば、格差拡大の追及をかわせるという趣旨の発言をしただけです。結局、財界も安倍内閣も、大企業が大もうけすれば、やがて家計にゆきわたるという古い議論に固執し、国民をごまかし続けようとしています。

 そんな高度成長期の議論がとっくに通用しなくなっていることは、政府の報告書さえ再三にわたって指摘してきました。家計消費が底ばいから今回の景気局面で最大のマイナスへ悪化したことは、財界と政府の主張が「絵に描いたもち」にすぎないことを改めて証明しています。

 何より、雇用規制を緩めて大企業の収益力を強める「構造改革」は派遣・契約、偽装請負をまん延させ、低賃金で劣悪な雇用を急激に広げてきました。家計を痛めつけて大企業が大もうけをあげてきたのであり、大企業から家計に利益が波及するというのは現実と正反対の虚構です。

「逆立ち」税制でも

 大企業による直接の所得吸い上げに加え、「庶民に大増税、大企業に減税」の「逆立ち」税制は、庶民の負担増で大企業の負担を減らす公的な所得吸い上げ政策です。小泉内閣以上に財界に甘い安倍内閣の下で、日本経団連の御手洗会長(キヤノン会長)は、消費税増税を担保に、法人税の10%引き下げによる四兆円以上の大減税を要求しています。

 このままでは、いつまでたっても家計の本格回復など夢物語です。「景気回復」局面にもかかわらず大多数の国民が所得の減少に苦しみ、不況になればもっと痛めつけられるような経済政策は、一刻も早く抜本転換するよう求めます。


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