2006年11月15日(水)「しんぶん赤旗」
鼓動
赤字とまらぬサッカーくじ
もはや「振興」でなく「破壊」
「(スポーツ振興基金の借金は)返済するので税金投入ではない」。文科省はこう強弁します。
しかし、返済のいかんにかかわらず、公的資金を投入した事実は動きません。しかも、「借りた基金の利子は毎年支払うが、基金そのものの返済計画はない」(日本スポーツ振興センター)という状態です。
それほど、サッカーくじの台所は火の車です。実は、その借金は216億円(みずほ銀行の190億円、スポーツ振興基金の26億円)にとどまりません。今年初めに直営方式へ経営形態を切り替えた際に、初期投資として約100億円を投じています。結局、センターの借金総額は300億円を超える額に上っています。
しかも返済の見込みはたっていません。
同センターは9月、「ビッグ」という新商品を発売したものの、1回あたりの売り上げは、目標(3億円)にすら到達できない状況です。今季の売上額は現在、91億円。サッカーくじの採算ライン250億円を下回ることは確実で、昨年度の149億円に到達することも難しい。
他のマスコミもスポーツ振興基金について、「担保が担保のままで済むのか」(日経金融、9月20日付)と指摘し、基金の助成を受けている日本オリンピック委員会(JOC)関係者からも「基金がどうなってしまうか心配だ」との声が漏れてきます。
もはやサッカーくじは、運営すればするほど、赤字が膨らむ以外にない状態です。さらに、その借金が、スポーツ振興基金という、日本のトップ選手や指導者が頼りにしている基金を、むしばみ始めるという新たな段階に突入しています。このまま推移すれば、膨らみ続ける借金が、センターの管轄下にある国立競技場など、他のスポーツ施設をものみ込む可能性すらあります。
サッカーくじの正式名称は「スポーツ振興くじ」。しかし、それ自体からスポーツ界に「果実」はもたらされず、逆にこれができたことで、国のスポーツ予算が3分の2に減額され、くじの借金が、日本のスポーツ環境を破壊しつつある――。
もはや「スポーツ破壊くじ」ともいえる、同くじの廃止を、文科省は決断すべきです。
(和泉民郎)