2006年11月14日(火)「しんぶん赤旗」

主張

教育基本法改悪案

土台が崩れた。撤回しかない


 政府の教育基本法改悪案をめぐって、国会が緊迫しています。政府・与党は、今週半ばの衆院での採決・通過をねらっていますが、もってのほかです。

提出者の資格問われる

 教育基本法改悪案は、これまでの一人ひとりの子どもの「人格の完成」をめざす教育から、「国策に従う人間」をつくる教育へと、目的を百八十度転換させるものです。九日の衆院特別委員会で参考人が示したように公立小中学校校長の66%が改定に反対しています。いじめや未履修など、教育の困難を解決するどころか、教育の自由と自主性を奪い過度の競争で現場を荒廃させる改悪案は徹底審議のうえ、廃案にすべきです。

 しかも、政府主催のタウンミーティングでの「やらせ質問」など、調査や徹底究明が必要な問題が次々と起こっています。

 安倍首相は、「教育基本法と、タウンミーティングの問題は別だ」として改悪案の成立を急ぐとしていますが、いま起こっているのは、教育の根本法の改定法案提出者としての最低限の資格が問われる問題です。

 「やらせ質問」は、政府が、教育基本法改定の世論を誘導していた問題です。教育改革をテーマにした八カ所のうち五カ所で、やらせ質問が行われています。うち、青森県八戸市開催の場合、文部科学省の主導ぶりが、日本共産党の笠井亮衆院議員の質問で明らかになりました。開催依頼は文部科学省生涯学習政策局で決めて、大臣官房総務課広報室を通じて内閣府に依頼し、やらせ質問の項目案を同広報室が作成し、室長も承認していました。

 政府は国会審議でも、なぜいま教育基本法改定なのか、まともな説明ができないでいます。そのなかで、国民の理解を得ている“根拠”として、タウンミーティングでの世論をあげてきました。その世論形成に、不正があったのです。政府が、「タウンミーティングで民意の広がりがあるというのは適当でなかった」(伊吹文部科学相)というなら、教育基本法改悪の根拠が土台から崩れたことを自ら認めたものです。

 教育基本法改悪案が目指す教育には、もともと未来がありません。

 たとえば、政府の改悪案は、新たに教育の目標をつくり、そこに「国を愛する態度」など二十の徳目を列挙し、その目標の達成を国民全体に義務づけています。しかし、前国会の審議で、政府は、日本共産党の質問に、愛国心を「評価するのは難しい」と答弁せざるをえなくなり、これをうけて、教育現場で、“愛国心通知表”の撤回が相次ぎました。

 教育基本法を改悪して、真っ先に実施するという全国一斉学力テストも、競争とふるいわけを目的にし、矛盾を広げます。東京都足立区が打ち出した、学力テストの結果で学校をランク分けし、予算に格差をつける方針は、住民の批判を受けて、区は見直しを表明せざるをえませんでした。

現行法生かした教育を

 相次ぐ子どものいじめ自殺は、子どもと教育をめぐって、深刻な事態が起こっていることを改めて感じざるをえません。教育基本法改悪案では、いじめ自殺を防ぐことはできません。改めて、子ども一人ひとりの「人格の完成」をめざす、現行法を生かした教育を土台にいじめ自殺問題を論議する必要があります。

 政府・文部科学省に、法案提出者としての資格が問われており、土台から根拠が崩れているいま、改悪案は撤回しかありません。


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