2006年11月9日(木)「しんぶん赤旗」

共和党に“大逆風”

イラク・醜聞・大統領不人気


 七日に実施された米中間選挙では与党・共和党が大敗し、野党・民主党は下院で十二年ぶりに多数を獲得し、州知事でも多数を制しました。上院では、民主党系無所属をあわせると両党とも四十九議席で並び、残る西部モンタナ、南部バージニアの二州では結果確定がずれ込んでいます。このうちモンタナではイエローストーン郡で票の再集計が必要になったため、開票作業が八日朝までずれ込むもよう。バージニアでは、得票差が1%未満の場合に次点候補は再集計を求めることができるため、再集計に持ち込まれる可能性が高まっています。その場合、勝敗の確定は今月末以降にずれ込む見通しです。


 今回の米中間選挙でブッシュ政権は対テロ戦争やイラク戦争での「実績」と「揺らぐことのない確固とした姿勢」を看板にして、党内で方針の定まらない民主党を追い込む腹積もりでした。しかし、六割の国民が政府のイラク政策を批判または疑問視し、与党・共和党には最大の「逆風」となってしまいました。

 「逆風」はこれだけにとどまりません。大物ロビイスト、エイブラモフ被告との「政治とカネ」の癒着では、下院院内総務を務めたディレイ議員が辞職に追い込まれるなど、十指を超える共和党議員がかかわっていました。

 選挙戦終盤にはフォーリー下院議員が研修生にわいせつなメールを送っていた醜聞が発覚。共和党が唱える「伝統的倫理観」を疑わせるスキャンダルでした。

 そして金看板となるべきブッシュ大統領の人気のなさ―。支持率三割台を低迷し、一時は29%を記録しました。大統領出席の選挙集会に、再選を目指すカリフォルニア州のシュワルツェネッガー知事は欠席。投票日前日にはフロリダ州マイアミで、弟のブッシュ現知事を継ぐ候補が大統領と同席する集会をあえて避けるほどでした。

 「イラク」「醜聞」「ブッシュ不人気」は共和党へのまとまった逆風となり、民主党は、共和党候補とブッシュ大統領との仲、イラクを結びつけたコマーシャルを連打しました。

 これに対して共和党選対指導部が打ち出した指示は、「地域住民の関心に対応せよ」「国民の財布の問題を訴えよ」でした。移民の規制、同性婚や妊娠中絶の否認、富裕層に手厚い大型減税の恒久化がその主な内容でした。

 保守層やキリスト教右派が共和党不信から棄権に回らないよう、その票固めと投票動員にかけたともいえる戦術です。しかし反応は鈍く、前回までのような効果はありませんでした。

 ブッシュ大統領は最終盤、「米国の価値観を守らなければならない」と連呼。オハイオ州の現職デワイン上院議員候補は「わたしは減税を続けるが、彼(民主党候補)は必ず増税する」と述べるなど、民主党は「増税の党」と決めつけるネガティブキャンペーンに走りました。

 しかし、デワイン氏が落選したように、共和党選対指導部の指示では同党の後退を覆せませんでした。(居波保夫)


史上2人目の黒人州知事

 米北東部マサチューセッツ州の知事選挙で、民主党の黒人候補で弁護士のデバル・パトリック氏(50)が当選確実となりました。選挙で選ばれる黒人の州知事は、1990―94年にバージニア州知事を務めたワイルダー氏以来で、米史上2人目。

初のイスラム議員

 米中西部ミネソタ州5区の下院議員選挙で民主党から立候補した新人キース・エリソン氏(43)が当選確実となりました。米メディアによれば、同氏は米連邦議会で初のイスラム教徒の議員となります。

女性初 下院議長誕生へ

 民主党が下院の多数派となったことにより、ナンシー・ペロシ院内総務(66)が下院議長となる見込みです。同氏は、米史上初の女性下院議長となります。

イラク負傷兵は善戦

 イラク戦争で両足を失った元米軍女性兵士で、米中西部イリノイ州6区の下院議員選挙に民主党から立候補したタミー・ダックワースさん(38)は、共和党が強い選挙区で善戦しましたが、及びませんでした。


崩れた「強い大統領制」

 第二次世界大戦後の米議会は、一九九四年の中間選挙までは、ほぼ一貫して民主党が多数を占めていました。下院で共和党が多数派となったのは、四七―四八年と五三―五四年だけでした。

 これが大きく変化したのは、クリントン民主党政権下の九四年の中間選挙でした。ネオコン(新保守主義者)に属するギングリッチ氏(後に下院議長)を先頭とする共和党の新たな右派が大躍進しました。それ以後、今回まで、共和党多数派時代が続いてきました。

 共和党が多数となった議会は、民主党政権下でも、一連の反動的施策のイニシアチブをとりました。イラク・フセイン政権打倒を米国の国策とした「イラク解放法」の制定(九八年)、包括的核実験禁止条約(CTBT)や地球温暖化防止京都議定書の批准への反対などです。

 二〇〇三年のイラク戦争開始にあたってもブッシュ政権は、安保理による開戦への承認を得られないもとで、イラク解放法と〇二年秋に議会が採択した武力行使容認決議という国内法だけを法的根拠にして戦争に踏み切りました。ここでも、共和党が議会多数派であったことがものをいいました。

 これまで共和党は、大統領、上院、下院の三つとも支配することで、「強い大統領制」をめざし、強硬な内外政策を実施してきました。今回の選挙で民主党が下院で多数を回復したことにより、あと二年を残すブッシュ政権に大きなブレーキがかかりました。注目されるのはイラク戦争・占領への影響です。

 民主党のディーン全国委員長はCNNテレビに対し、「大統領にイラク撤退を強いるためにわれわれができることは多くない。しかし最終的に、われわれは一定の影響を及ぼすことができ、民主党は方向転換を試みる」と語りました。(坂口明)


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