2006年11月9日(木)「しんぶん赤旗」

主張

米中間選挙

ブッシュの戦争が断罪された


 アメリカの中間選挙でブッシュ政権与党の共和党が大幅に議席を減らし、下院では十二年ぶりに過半数を失うことが決まりました。上院はきっ抗したまま開票が続いています。

 四年ごとに行われる大統領選挙の折り返し点で、上院の一〇〇議席のうちの三分の一、下院の全四三五議席などが改選される中間選挙は、政権に大きな影響を与える選挙として注目を集めてきました。とりわけ今回は、ブッシュ政権が始めたイラク戦争をめぐり、その是非が最大の焦点となった選挙です。政権与党の共和党が大幅に議席を減らした選挙結果は、ブッシュの戦争が断罪されたことを意味します。

イラク戦争が最大の争点

 中間選挙に先立って、有力メディアが「ブッシュをめぐっての選挙だ。与党は去らなければならない」「共和党は選挙結果にのたうちまわって当然だ」と主張したほど、ブッシュ政権とその与党の共和党への批判が高まっていました。州知事選挙でも共和党候補の落選が相次いだことは、政権とその与党への全国的な批判の広がりを浮き彫りにしています。

 イラク戦争でのアメリカ軍の死者は、中間選挙直前の十月には最悪の百人を突破し、アメリカが一方的にイラクに侵略して以来二千九百人を超えています。犠牲は増え続けているのに、イラクに平和と安定を取り戻す見通しは立たず、アメリカ自身もテロの危険から逃れることができないでいます。

 もともとイラク戦争は、ブッシュ政権が根拠もなくイラクがテロリストをかくまっているとか大量破壊兵器保有の疑惑があると決め付けて、国際社会の反対を押し切って開始した侵略戦争です。開戦から三年半あまり、今ではその口実がことごとく成り立たなくなっています。ブッシュ政権が国民の批判にさらされるのは当然の成り行きです。

 ブッシュ大統領は選挙戦最終盤になって、泥沼化するイラク情勢に対し、「戦術を変える」とはいうようになったものの、米軍の撤退は拒否し、事態打開の展望を示すことはできませんでした。内政では経済格差と貧困の拡大が深刻化し、ガソリン価格の高騰による景気の先行きへの不安や共和党議員によるスキャンダルなどにも直面しました。

 野党の民主党が議席を伸ばしたのは、こうしたブッシュ政権の失政を批判したためです。もともと民主党もイラク戦争の開始にあたってはブッシュ政権を支持し、イラクの泥沼を抜け出す政策を持っているわけではありません。にもかかわらず、国民がこうした結果を選択したのは、イラク戦争がもはやこのまま続けることのできない深刻な事態に立ち至っていることを示すものです。

 ブッシュ政権は「同盟国」を巻き込んで「長い戦争」をたたかうとしてきましたが、国民の批判はいまや明白です。国民の意思をうけ、新しい議会とブッシュ政権には、イラク戦争の出口を見いだす努力が真剣に求められます。

撤退なしには打開できない

 イラク情勢の泥沼化の根本には、アメリカが大義のない戦争と占領を続けていることがあります。アメリカが撤退の筋道を明らかにしない限り、事態打開の展望は開けません。

 ことはアメリカの問題にとどまりません。日本政府は小泉、安倍と二代にわたりイラク戦争を支持してきました。アメリカ国民の断罪が明らかになってもなお支持を続けるのか、安倍政権にとってもその態度がきびしく問われることになります。


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