2006年11月8日(水)「しんぶん赤旗」
「やらせ質問」全経過
青森タウンミーティング
政府も認めたこの事実
「政府こそ規範意識がない」「民主主義の否定だ」――。青森県八戸市での「教育改革タウンミーティング」(九月二日)で、教育基本法改悪法案に賛成するよう政府が「やらせ質問」を依頼していた問題に怒りがまき起こっています。七日、政府はこの事実を全面的に認める調査結果を発表しました。「やらせ質問」はどのように行われたのか――。
内閣府は、タウンミーティング開催前に県教育委員会・教育庁に「やらせ質問」の三つのひな型(質問項目案)を送っていたことが日本共産党の国会質問で明らかになっています。その内容は、(1)時代に対応すべく教育基本法は見直すべき(2)「改正」案は「公共の精神」や「社会の形成者」などが重視されていて共感している(3)新しい教育基本法に「家庭教育」の規定が追加されていることは大事―といういずれも改悪法案に賛成する立場のもの(内閣府提出資料上)。内閣府は併せて、「自分の言葉で」「せりふの棒読みは避けてください」「自分の意見を言っているという感じで」などこと細かに指示した発言の注意事項も送っていました(同下)。
今回の政府の調査結果で浮き彫りになったのは、これらの「やらせ質問」の準備を文部科学省が主犯となって進め、内閣府がその舞台づくりをした実態です。
内閣府は八月十、十一日に八戸市教育委員会、県教育庁を相次いで訪問。タウンミーティングの広報や参加者の呼びかけを依頼しました。同時に、対話のきっかけとなるような意見を述べてくれる人を三、四人探してほしいと頼みました。
その際、内閣府は「賛成・反対を問わず、対話のテーマの趣旨に沿った意見を持つ者」「事前に発言内容を決めた『さくら』ではない」などと依頼していました。
八月二十二日、八戸市教育委員会が発言希望者と発言趣旨を内閣府に送りました。内閣府は発言趣旨を文科省に提供しました。
この発言趣旨を見た文科省は内閣府に対し、「議論の活発化のために教育基本法の改正についての議論があったほうがよい」ということで、質問項目案を文科省が作成すると内閣府に連絡しました。
文科省は八月三十日に質問項目案を内閣府に送り、これを内閣府が八戸市教育委員会と県教育庁に送付しました。そこから発言者に質問項目案が送られました。文科省が議論を改悪法案賛成の方向に持っていこうとしたのがはっきりと示されています。
八月三十一日に、内閣府が「棒読みにならないように」などとした注意事項を八戸市教育委員会と県教育庁に送り、翌九月一日に発言者に注意事項が届きました。
当日に、質問項目案に関する「発言候補者」のうち二人が発言したことを政府の調査も認めています。
運営面でも違和感
当日の参加者は語る
政府が「やらせ質問」を行った青森県八戸市のタウンミーティングは、運営面でも「国民の声を聞く」とは名ばかりで、二時間のうち参加者の発言はあわせてわずか二十分。あとは小坂憲次文科相(当時)などのパネリストがながながと話すという内容でした。
当日参加した高校教諭の男性は「私も五回ほど手を挙げたが指名されなかった。はじめから、改悪案の宣伝が目的だったのではないかと思った」と言います。会場からは十人が発言。一人二分以内で、このうち二人が「やらせ」でした。
別の中学校教諭の女性は「二、三人が『愛国心』や『家庭教育』などで教育基本法改悪法案への賛成の発言をした。いきなりそういう発言が出たことに違和感を感じた」と話します。
青森県教職員組合の平戸富治副委員長は「安倍首相や伊吹文科相は『規範意識』を強調するが、教育基本法を『改正』しようとしている人たちこそ規範意識を持ってもらいたい」と語っています。
文科省指示の流れ
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