2006年11月8日(水)「しんぶん赤旗」
やらせ 主犯は文科省
審議の前提が問われる
青森県八戸市での「教育改革タウンミーティング」の「やらせ質問」問題について、内閣府の調査結果が出ました。それを見ると、やらせ質問の主犯が文部科学省だったことは明りょうです。教育基本法改悪法案について、所管の文科省が裏で賛成意見をねつ造していたことは、法案審議の前提にかかわる大問題です。
やらせ質問について青森県の陸奥日報七日付社説は「百年の大計となる教育の基本法を真っ先に担うべき側が、まず襟を正さなければならない」と論評。同じく東奥日報五日付社説は「自作自演、やらせ体質で真の教育再生ができるのか。役所、役人の体質再生が先だ」と厳しく批判しています。
今回のやらせ質問は、政府に都合のいい世論をでっち上げる、最悪の民意軽視であり民主主義の否定です。「うそをつかない」という社会の最低限のルールを破る政府・文科省には教育を語る資格もありません。教育基本法以前の問題であり、文科省の責任を徹底的に追及することが必要です。
そのためには、まず文科省自身による事実調査が必要です。内閣府の調査で文科省の責任がこれだけ明らかになったのですから、文科省内でやらせを誰が指示して誰がかかわったのかなどを糾明しなければいけません。
ほかのタウンミーティングについてもやらせ質問がなかったのかを明らかにすることも不可欠です。
タウンミーティングは小泉純一郎首相が始めたもので、小泉内閣の五年間で百六十数回行いました。教育改革がテーマのものは八戸市以外に七回でした(表)。内閣府はこの七回についての調査結果を九日に報告するとしています。事実を隠ぺいしたりしないよう監視と検証が必要です。
なによりも、教育基本法改悪法案を廃案にし、政府・文科省自身が現行の教育基本法の原点に立ち返って再出発を図るべきです。
現行の教育基本法は教育の目的を「人格の完成」におき、「教育は、不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接に責任を負って行われる」ことを定めています。この高い理想こそ、やらせ行為に走った政府が熟読玩味すべきです。
世論誘導で教育の根本法である基本法の改悪を狙うという「やらせ質問」を認めた以上、法案は撤回すべきです。 (北村隆志)
これまでの教育改革タウンミーティング
2003年12月13日
岐阜県岐阜市
参加者473人
2004年4月3日
山形県米沢市
参加者389人
5月15日
愛媛県松山市
参加者431人
10月30日
和歌山県和歌山市
参加者354人
11月27日
大分県別府市
参加者312人
2005年3月5日
島根県松江市
参加者422人
6月11日
静岡県静岡市
参加者340人
2006年9月2日
青森県八戸市
参加者401人