2006年11月6日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
住民が支えて根付く文化
深谷シネマ
埼玉
商店街に復活、盛況
リクエストにも応え評判
NPO法人「市民シアター・エフ」が運営する埼玉県深谷市の深谷シネマは、客席四十九席の小さな映画館です。JR深谷駅から徒歩五分、商店街の中にあり親しみやすい雰囲気です。
深谷シネマで映画を鑑賞すると、並びにあるラーメンとだんごの店「伊勢屋」で、百円割引きになるなど、地域の商店街と連携しています。
深谷市の支援で銀行の空き店舗を改装し、商工会議所や市民の協力に支えられ、深谷で三十年ぶりに映画館が復活。二〇〇二年の開館から四年余りで観客数十万人を突破しました。
観客数を伸ばしてきた背景に、上映作品を観客アンケートをもとに選定するといった、ていねいに要望に応える運営方法があります。良質な作品を上映することで口コミで評判が広がりました。常連だという男性(32)=深谷市=は「観る人が選んでいるから外れが少なく、面白い映画をやってくれる」と話します。自転車で訪れた女性=深谷市=は「近くにある映画館だから気軽に来られます」といいます。
約二千人が鑑賞した「明日の記憶」(出演・渡辺謙、樋口可南子)をはじめ、邦画が健闘しています。(別項参照)
サークル活動も
深谷シネマを拠点に自主的な映画鑑賞サークル、シナリオ教室も活動し、文化の発信地にもなっています。
今年春から、寄居町と秩父市でも出張映画会を開始し、初代の移動用映写機が活躍しています。
深谷シネマ理事長の竹石研二さん(58)は「まちに文化を取り戻すことが人やまちに潤いや活気を与えます。自分のまちに映画館があれば、生活にうまく取り入れて楽しめます」と話します。
(浜島のぞみ)
連絡先=深谷シネマ048(551)4592
邦画作品ベスト5
(1)ALWAYS 三丁目の夕日
(2)半落ち
(3)明日の記憶
(4)誰も知らない
(5)博士の愛した数式
外国映画ベスト5
(1)戦場のピアニスト(フランス、ドイツ、ポーランド、イギリス)
(2)四月の雪(韓国)
(3)マザー・テレサ(イタリア、イギリス)
(4)山の郵便配達(中国)
(5)ラブストーリー(韓国)
田辺寄席
大阪
TVよりずっといい
神戸へ出前 被災者も心待ち
関西では公民館やお寺などを会場に開かれる地域寄席が盛んです。大阪市阿倍野区と東住吉区にまたがる地域で三十二年間続いている田辺寄席は、現存する地域寄席ではもっとも古く、多くの落語ファンに親しまれています。
一九七四年九月にスタートして以来、毎月開催され、十一月で通算四百七回になります。会場の阿倍野青年センターは約百五十人の観客でいっぱい、笑いが絶えません。中入り(休憩時間)にはお茶や菓子も出て、終始温かい雰囲気です。「ありがとう。よう笑わせてもろた」「テレビより生のほうがずっといい」と観客はみな満足顔です。
近畿以外から来る観客もめずらしくありません。月一回発行の会報「寄合酒」は千四百部、全国に読者がいます。
手弁当で運営 設営も自前で
寄席は十数人の世話人が手弁当で運営しています。会場の舞台設営は自前で三時間かけます。
世話人の一人、大久保敏さん(59)は「一回一回の積み重ねでここまで来ました。演者や観客、多くの人たちが田辺寄席を自分の寄席のように大事に思って支えてくれているのがうれしい」と語ります。
活動は寄席だけにとどまりません。毎月、神戸に出向いて阪神・淡路大震災の被災者を励ます交流会「ふれ愛喫茶」を開催。毎年、神戸まで舞台を運んで開く出前寄席は、多くの被災者が心待ちにしています。
会員募って 財政難打開
今年の春から、寄席が一新されました。会員制を導入したことと、月一回だった公演を月三回にしたことです。
会報の発行費用を負担していた大久保さんの経営する書店が一昨年放火にあい、寄席は財政難に陥りました。参加者に寄席継続の危機を率直に訴え支援を求めました。多くのファンがそれに応え、特典付きの年会費制(千五百円の郵送会員と一口三千円の賛助会員)で財政的に支えられるようになりました。会員は現在六百五十人です。
月三回の公演は土曜に二回、日曜に一回と連続します。苦労して設営した舞台を一回で撤去せずに三回に生かせるようになりました。落語だけでなく、講談、浪曲など多彩で充実したものができるようになりました。
三回公演は作業量も大幅に増え、会場設営などを手伝うスタッフを大募集しています。
後片付けを手伝っている阿倍野区の会社員、竹下町子さん(56)はいいます。「この寄席は手抜きをしないんです。おはやしもテープではなく生の演奏です。大事にしていきたい」(隅田 哲)
連絡先=田辺寄席世話人会06(6627)0051