2006年11月6日(月)「しんぶん赤旗」
赤旗まつり
訴えれば伝わる思い
シンポ がんばれ教育基本法
教育基本法改悪法案をめぐる国会情勢が緊迫する中、五日、赤旗まつり三日目の中央舞台ではシンポジウム「改悪反対!がんばれ教育基本法―子どものために力をあわせよう」が行われました。
〈出演者〉
大東文化大学教授
村山士郎(むらやましろう)さん
母親
山下有美(やましたゆみ)さん
全日本教職員組合副委員長
山口隆(やまぐちたかし)さん
学生
鈴木飛鳥(すずきあすか)さん
日本共産党副委員長・衆院議員
(司会兼任)石井郁子(いしいいくこ)さん
村山さん 新『銃口』の時代許さない
山下さん 手づくりビラで対話広げ
山口さん 全教史上 最大の運動へ
鈴木さん 教育基本法はかっこいい
石井さん 運動強めて改悪案廃案に
いま、「いじめ」、高校での必修科目未履修、格差の拡大などさまざまな問題が出ています。シンポジウムではこうした子どもと教育の現状について村山さん、山下さん、鈴木さんが発言しました。
いらだちやむかつきを抱え、不安感や抑圧感に悩まされる子どもたち、学力テストの点数を競わせる競争主義、格差社会の広がりによる家庭の困難、受験だけが目的になり本当に学びたいことが学べない学校、学費が払えず進学できない友達、アルバイトに追われて勉強できない大学生…。
山口さんは、今夏、全日本教職員組合(全教)の視察で訪れたフィンランドの教育について語りました。
競争を排した学校はやわらかな雰囲気で、一クラスは二十人前後。学費は大学まで無償、「できる子」「できない子」という分け隔てをしない、教育政策に国民の合意を重視―こうしたフィンランドの教育の特徴を紹介し「これは日本の教育基本法の精神とまったく重なります」と強調しました。公教育への支出がフィンランドはGDP(国内総生産)比で6・0%、日本は4・7%です。「フィンランド並みに引き上げれば、日本でも大学までの無償化と小学校から高校までの三十人学級が実現できる」との山口さんの話に、大きな拍手がわきました。
石井さんが、与党が同改悪法案の採決を狙っている緊迫した国会の状況を報告。「衆院教育基本法特別委員会の日本共産党の一議席は、みなさんの声と運動を国会につなぐ貴重な一議席。全力をあげてたたかいます」と決意をのべました。
石井さんはまた、学校選択制の全国への拡大や、監察官を配置して学校を「評価」するなど安倍内閣が掲げる「教育再生」の問題点を語りました。モデルにしているイギリスの「教育改革」は失敗し見直しが始まっていると指摘し、「イギリスで失敗ずみのものを日本に取り入れようとしている。これは公教育の破壊です」と批判しました。
それぞれの運動や取り組みを報告。山口さんは、「法案の帰すうを決するのは世論と運動の力。全教の結成以来、最大規模の運動をと、取り組んでいます。子どもの健やかな成長を願わない父母や国民はいない。しっかり力を合わせて廃案を目指し全力をあげます」と力強くのべました。
山下さんは、周囲の母親たちも教育基本法のことをほとんど知らず、「政府はみんなが分からないうちに通してしまおうとしている」と、絵の入った分かりやすい手づくりのパンフレットを配ったり、保育所で勉強会をしたことを紹介。毎日駅頭で宣伝し、署名を集めるなどの行動を続けるなかで、「周りの人も知ることで少しずつ変わってきた」と語りました。
鈴木さんは友達と「先生のたまごクラブ」を結成し、教育基本法について学ぶ集いを企画しました。七百人にメールを送るなど必死に呼びかけて成功させた経験を報告。教育基本法の問題をまったく知らなかった学生がこの集いに参加して、「これはやばい」と本も買って勉強し行動を始めたことを紹介しました。「学べば学ぶほど教育基本法は最高にかっこいいと思う。歌やファッションのように教育基本法のかっこよさを知らせていけば、思いは伝わる」と語りました。
村山さんは、戦前の反省に基づいてつくられた教育基本法の柱の一つは「国も不当な支配の主体になる」と認めたことにあるが、改悪法案はそれを覆し、かつての国と教育の関係を復活させようとするものだと指摘。戦前の教師への弾圧を描いた三浦綾子さんの小説『銃口』にふれながら「新『銃口』の時代を許してはならない。教育基本法の理念を次の若い人たちに発展させながら手渡していくために頑張りましょう」と語りました。
最後に石井さんが「廃案にするために力を尽くしましょう」と呼びかけると、参加者は大きな拍手でこたえました。
千葉県から参加した高校教師(56)は、「学生の発言に日本の若者も頑張っていると励まされました。イギリスで破たんしたものを日本でやるなんて許せない。改悪はなんとしても阻止しなければ」と語りました。