2006年11月4日(土)「しんぶん赤旗」
ニカラグア大統領選あす投票
左派オルテガ元大統領が優位
「援助減少も」 米が公然と干渉
【マナグア(ニカラグア)=松島良尚】中米ニカラグアの大統領選挙が五日に迫っています。各種世論調査で一位、30%台の支持を維持する左派・サンディニスタ民族解放戦線(FSLN)党のオルテガ元大統領が右派候補の集中攻撃を浴びるなか、選挙キャンペーンは一日に終了しました。米国は反オルテガを掲げ、公然と干渉しています。
米大統領直属機関の一つ、国際開発局のフランコ中南米・カリブ地域責任者補佐は先月二十八日、オルテガ氏が当選した場合、「経済援助の減少もありうる」と脅迫。「中米自由貿易協定に関するオルテガ氏の発言などを懸念している」と述べました。
米州機構が声明
この発言の直前には、一九八〇年代のレーガン米政権のもと、反政府武装勢力「コントラ」への秘密援助に深くかかわったことで知られているノース米海兵隊退役中佐がニカラグアを訪れ、右派候補の選挙キャンペーンに参加。オルテガ氏の革命政権時代を想起させ、「過去の苦しみを復活させてはならない」と反オルテガを訴えました。
オルテガ氏勝利の場合に米在住ニカラグア人の本国への送金を規制する画策も、前回大統領選のときと同様、米共和党議員らが強めています。
米州機構(OAS)選挙監視団は十月下旬、他国の干渉を遺憾とする声明を発表しました。グティエレス米商務長官の干渉発言や、米大使がオルテガ氏に投票しないよう露骨に呼びかけたからです。しかし、声明はまったく無視されました。
オルテガ氏以外のおもな候補者は、与党第一党の右派・立憲自由党(PLC)から分裂したニカラグア自由同盟(ALN)のモンテアレグレ元外相とPLCのリソ元副大統領、FSLNから分裂した中道左派・サンディニスタ刷新運動(MRS)の経済学者、ハルキン氏です。
10ポイント以上の差
右派が分裂して大統領選に臨むのは、十六年前に当時のオルテガ大統領が下野して以来、初めてのこと。九五年創設のMRSも前回大統領選では候補者を擁立しませんでした。
オルテガ氏は、世論調査二位のモンテアレグレ氏に10ポイント以上の差をつけています。第一回投票で当選するには40%以上の得票、または35%以上で二位に5ポイント以上の差をつける必要があります。
モンテアレグレ陣営は選挙最終盤、米国のあらゆる干渉を受けた内戦当時の映像をテレビで流し、「オルテガはニカラグアにとって危険」と宣伝しました。
オルテガ氏は「平和と和解」を掲げ、「右派政権の十六年間は、国民の八割がいまも貧困であることをみても失敗した」と批判。右派の「汚い戦争」の挑発にのらない戦術をとりました。
選挙キャンペーン最終日の一日には、雇用拡大による貧困克服のためにも市場経済と企業活動を保障し、ベネズエラやブラジル、カリブ海諸国などと協力してさらに市場を広げると強調しました。
「生活はぎりぎり」
路上でパン売る女性
「もっと仕事をふやしてほしいわ。生活は食べるだけでぎりぎり」
かごを頭にのせて運んでいたグロリアさん(33)(写真)。政治への一番の期待です。五日に大統領選が行われる中米ニカラグアの首都マナグア中心部の路上でパンを売っています。
一日のもうけは約六十コルドバ(約四百円)。食堂で働いている夫の稼ぎは月に二万円ほど。子どもは五人です。
ニカラグアではこの数年で立派な空港ができ、首都を走る幹線道路もかなり整備されました。しかし、右派を支持する人も、保守政治のこの十六年間、貧困はほとんど減っていないといいます。
「選挙は秘密投票よ」。だれに投票するつもりかときくと、笑ってごまかされました。(マナグア=松島良尚)