2006年11月3日(金)「しんぶん赤旗」
ハンセン病 標本胎児の「慰霊祭」
堕胎の「堕」外せと干渉
厚労省
ハンセン病療養所の「標本胎児」の「慰霊」をめぐって2日、群馬県の栗生楽泉園入園者自治会(藤田三四郎会長)が国の対応に抗議する会長名の声明を発表しました。
栗生楽泉園 “弁護団発言も断れ ”
声明は、同園で七日に開催を予定している「慰霊祭」について、同自治会と施設側(楽泉園)が「協議を重ねる中で、(名称を)『堕胎児合同慰霊祭』とすることで合意していたにも関わらず、突然厚労省より施設当局に対し…『堕胎児』の『堕』を削除し、同時に弁護団の『慰霊の辞』を断るようにとの干渉があ」ったと指摘。
そして、「私たち自治会は…治療の身ゆえにやむを得ず受け入れざるを得なかった」と苦しい胸の内を吐露するとともに「厚労省のこうした干渉には激しい怒りをおぼえ抗議する」「七日の慰霊祭は…あくまで納得いかぬまま開催され、納得いかぬまま出席する」としています。
「強制堕胎・胎児標本」問題は昨年三月、ハンセン病問題に関する検証会議が発表した被害実態調査の「最終報告書」で明らかになったもの。「発見」された「標本胎児」百十五体を含む数千にのぼる強制堕胎の規模と内容の非情さが、大きな社会問題となりました。
今年六月、元患者らとの直接交渉で、川崎二郎厚生労働相(当時)が、この問題で初めて謝罪。同八月にはハンセン病問題対策協議会の席上、すべての療養所を訪問して謝罪・慰霊するよう求めた元患者らに、厚労省側は「然るべき者」の出席を約束していました。
厚労省は本紙の取材に「園と自治会の間でよく話し合いをしてくださいというのが厚労省の立場」とし、「(同省担当者が園と自治会側に)個人としてと断った上で、堕胎児という名前では送られる胎児が浮かばれないと話した」と語りました。
「園長を通すことで、いやが応でものめというやり方に我慢なりません」というのはハンセン病違憲国賠訴訟全国原告団協議会の谺(こだま)雄二会長。「大臣は私たちとの約束で謝罪にくるのです。それを“大臣がくるから『堕胎』の『堕』の文字を外せ”というのは何ごとか。堕胎だから問題なのです。それを外せというのは、謝罪は形だけで、この問題を闇に葬ろうとするものです。この体質は以前となんら変わっていない」