2006年11月3日(金)「しんぶん赤旗」
教育基本法改悪阻止11・2中央大集会での
志位委員長のあいさつ(大要)
東京・日比谷野外音楽堂で二日夜開かれた「教育基本法改悪阻止11・2中央大集会」で、日本共産党の志位和夫委員長がおこなった情勢報告をかねたあいさつ(大要)は次の通りです。
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お集まりのみなさん、こんばんは。日本共産党の志位和夫です。(「こんばんは」の声、拍手)
連日のように国会に数百、数千という多くのみなさんが、教育基本法改悪ストップの思いを持ってきておられることに、私たちは本当に勇気づけられています。(拍手)
私たちは、前国会いらい、教育基本法改悪と正面からきり結ぶ論戦にとりくんできましたが、最後まで、みなさんとともに廃案に追い込むため頑張りぬく決意をまず申し上げたいと思います。(拍手)
現実を直視した議論こそ必要
いまの教育基本法改悪とのたたかいの焦点をもうしますと、教育基本法を改悪したらどんなにひどいことになるか、このことが教育現場の深い矛盾によって明らかになりつつある。これがいまの特徴だと私は思います。(拍手)
昨日、東京新聞は、「教育基本法 この現実を見て議論を」と題する社説を掲げました。
「いじめ自殺や高校必修漏れなど現実に起きている問題の深刻さは教育の根幹にかかわる。法改正を急ぐ前に現実を直視した議論こそ必要だ」(拍手)
「基本法を変える採決を急ぐときではないだろう。目の前の問題に真正面から向き合い、国民とともに本質をとことん議論して“根本治療”につながる処方せんを示すべきだ」(拍手)
私もこの通りだと思います。(「そうだ」の声、拍手)
いじめへの対応を困難にする
私は、十月三十日の衆院特別委員会の質疑で、いじめ克服とのかかわりで教育基本法の改悪の問題点をただしました。
あいつぐいじめ自殺という事態に、心を痛めていない国民はいらっしゃらないと思います。
私は二つの角度から問題をただしました。
第一は、いじめへの対応という問題です。文科省はあの福岡の事件が起こった直後に、全国の担当者を集めてこういって意思統一しました。「いじめの件数の多い少ない以上に、早期に発見し、教師集団が一致協力して解決にあたることが大切だ」。これはその通りの正論であります。
しかし、教育の現場はどうなっているか。私たちがお話をうかがいますと、実態は、いじめの件数が多いか少ないかで教師が評価されている。自分のクラスにいじめがあると報告すればそれで評価が下がるという実態があります。
いま先生も「S」「A」「B」「C」「D」の五段階の評価をされています。評価は下がり、下手をすれば「ダメ先生」とレッテルをはられ、給料だって下がる。こういう状況に置かれているという声が、私たちにたくさん寄せられました。
こうやって評価されたら、自分のクラスにいじめが発生しても、報告ができなくなります。教師が一人で抱え込んで、教師集団として問題を解決することができなくなります。ここに一番の問題がある。
それでは、教育基本法を改悪したらどうなるか。二〇〇三年に中央教育審議会が、教育基本法を改悪したときにつくる「教育振興基本計画」のひな型をつくりました。そこには、ずらーっと数値目標が並んでいるのです。教育を何でもかんでも数字にしてしまうというのが「教育振興基本計画」です。世界のトップレベルの学力水準にするといった式のいろいろな数値目標が書いてある。いじめについても「五年間で半減」という数値目標が書いてあります。ところが、本当に数値目標にしなければならない三十人学級は書いてないんです。(「そうだ」の声、拍手)
これは逆立ちしていますね。教育の中身は数値にすべき問題ではありません。それを数値目標にして押しつければ、実態が隠れて、みんなで力をあわせていじめを克服する最大の障害になるではありませんか(「そうだ」の声、拍手)。教育基本法改悪はこの点でも絶対に許すわけにいかない。このことを私は訴えたいのであります。(「そうだ」の声、拍手)
競争とストレスがいじめの温床に
もう一つの角度があります。なぜ、いじめが起こるか。その温床の問題です。いじめの温床というのは、子どもたちの道徳心の問題だけで説明できるものではありません。
子どもたちが耐え難いストレスにさらされている。ここにいじめの根本的な温床があるんじゃないでしょうか。そこからそのはけ口をほかの子どもに向けてしまう。
これは、国会で使ったパネルですが、北海道大学の伝田助教授のグループが三千人以上の小中学生を対象にした「抑うつ群」――うつ病になるリスクをもっている子どもの率のグラフです。
見てください。小中学生の平均で13%です。中学生は22・8%です。中学三年生は30%です。これだけの子どもたちが「抑うつ状態」に置かれている。「何をしても楽しくない」「とても悲しい気がする」「泣きたいような気がする」「生きていても仕方がない」――こういう本当に耐え難いストレスに置かれているのが実態です。
どうしてこんなひどいストレスに子どもたちがさらされているのか。もちろん、いろいろな原因がある。しかし、学校教育のなかでは、競争教育こそストレスの一番の原因ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
競争によってふるいわけをする、序列をつける。私は、本来は、学校というのは子どもにストレスがあっても、そのストレスを解放して、のびのびと成長する場でなければならないのに、学校がストレスの場になる。こういう状況をつくっているのは、まさに競争教育であります。
教育基本法を改悪して競争主義を徹底したらどうなるか。全国一斉学力テストをやる。それを公開する。学校選択制を全国に拡大する。こんなことをやれば、ますますストレスは激しくなり、いじめや学校の荒廃ということも深刻になると思います。
私は一言で言って、日本の教育のどこがいちばん悪いか。競争主義と序列主義こそ日本の教育をむしばむ一番の元凶だということを訴えたいのであります。(拍手)
競争のなかからは本当に学力は育ちません。わかる喜び、探求心は育っていきません。人をけ落とす競争ではなく、子どもが互いに学びあう、助けあう人間関係をつくる、探求心を育てあう、そのなかでこそ本当の学力が培われるのではないでしょうか(「そうだ」の声)。その指針になるのが教育基本法ではないでしょうか。(「そうだ」の声、拍手)
私は、安倍首相とずいぶん議論しましたけれども、こういういじめの問題ひとつとっても、何の認識も見識もありません。結局、首相の考えは、「いじめを隠す教師が悪い」「いじめをする子どもが悪い」「規範意識を身につけさせることが大切だ」「規範意識を教師と子どもにたたき込めば、いじめがなくなる」という。しかし、そんなことにはなりません。
「やらせ質問」での世論誘導は許せない
「規範意識」というんだったら、これは何だ。昨日、私たちの議員団が突きつけた問題があります。それは青森でやられたタウンミーティングで、なんと政府が「やらせ質問」をやらせていた。これが明らかになりました。「やらせ質問」の原稿がここにあります。教育基本法を改定したらどんないい教育になるか、これを「やらせ質問」でいわせるんですね。
「依頼発言についての注意事項について」という文言もあります。「できるだけ趣旨をふまえて自分の言葉で」(笑い)。「やらせ質問」を「自分の言葉」で語るのは大変です(笑い)。「せりふの棒読みは避けてください」(笑い)。「『お願いされて…』とか『依頼されて…』とかいうのは言わないでください。あくまで自分の意見をいっている、という感じで」(笑い)。これでやってるんですよ(「許せない」の声)。
みなさん、「規範意識」というのだったら、いちばん規範意識がないのは政府であり文科省じゃありませんか(拍手、「そうだ」の声)。
こんなやらせをやって世論誘導をやっているとしたら、それだけでも教育を語る資格なし、こうはっきりいわなければなりません(大きな拍手)。
廃案めざし、共同を広げに広げよう
みなさんいま共同が広がっております。全教系の労働組合も日教組系の労働組合もともに手を携えたたたかいがすすんでいます。先日、連合北海道が日本共産党北海道委員会に教育基本法改悪反対でいっしょにがんばりましょうと要請にきました(拍手)。廃案のために力を合わせようというエールの交換となりました。
教育基本法の改悪許すな、この声が日々、列島に広がりつつあります。これを広げに広げて、みんなの力で廃案に追い込むまでがんばりぬこうじゃありませんか。私もがんばります。ともにがんばりましょう。(「がんばろう」の声、大きな拍手)