2006年11月2日(木)「しんぶん赤旗」
独兵士スキャンダル
アフガン“頭がい骨”事件
海外派兵見直しの動き
国防相が「縮小」表明
【ベルリン=中村美弥子】アフガニスタン北部に駐留するドイツ連邦軍兵士が、墓地から持ち出した頭がい骨をもてあそんでいる写真が相次いで報道され、連邦軍のモラルが問われています。ユング国防相は十月二十九日、連邦軍の海外派兵について検討が必要だと表明し、海外派兵部隊の一部を帰還させたいとの考えを示しました。
ドイツは現在、アフガニスタンのほか、レバノン、コソボ、コンゴなど十一カ国に連邦軍部隊約九千人を派遣しています。一九九〇年代半ば以降、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)、国連の平和維持活動に参加、海外派兵が恒常化してきました。
駐留1年延長
連邦議会は九月末、アフガニスタン国際治安支援部隊(ISAF)に参加する連邦軍の駐留を一年間延長することを承認しました。十月二十五日には、独連邦軍がより広い地域で治安維持活動に従事する方針を示した国防白書を閣議決定しました。
こうしたなか、ビルト紙が頭がい骨をもてあそぶアフガン駐留兵士の写真を十月二十五日付に掲載し、国内に大きな衝撃を与えました。同紙は十月二十八日付にも別の写真を掲載。RTLテレビも独自に入手した写真を放映しました。
ユング国防相は、「このような振る舞いは決して許されない」と怒りをあらわにし、徹底調査と独軍兵士に対する教育の見直しを約束。その後、海外駐留部隊について検討し、一部縮小していくと表明、国防白書の方針とは逆の立場を示すようになりました。
同国防相は、フランクフルター・アルゲマイネ紙十月二十九日付で、「これまで海外に派兵する機会が増加したにもかかわらず、その意味と目的についてきちんと論議がされてこなかった」と発言しました。同日夜に出演した公共第二テレビ(ZDF)では、「海外派兵は限界に達した」と述べ、ボスニア・ヘルツェゴビナに展開する部隊八百五十人を十二月から徐々に帰還させたいとの考えを示しました。
拡大反対6割
N24テレビが十月三十一日に公表した世論調査によると、回答者の69%が連邦軍は過剰負担を抱えていると考え、60%がこれ以上の海外派兵に反対しています。
シュレーダー前政権時に国防相を務めたシュトルック社民党連邦議会会派議長も、海外派兵部隊の一部撤退に支持を表明。ビルト紙日曜版十月二十九日付で、「派兵が正当性をもつのかどうか常に検討する必要がある」と述べ、ボスニアからの撤退、コソボ駐留部隊の縮小を求めました。
アフガン駐留部隊の写真をめぐっては、現在、容疑者の兵士二十人が特定され、事情聴取を受けています。独政府は、この問題で、独連邦軍やドイツ人に対する攻撃が増加することを懸念。独外務省は在外公館に対し、警戒強化を求める指示を出しました。