2006年11月2日(木)「しんぶん赤旗」

主張

イラク情勢悪化

侵略・占領軍が危機を深める


 イラク情勢が悪化し、米兵の死者が十月に百三人と今年最悪になり、戦争開始からでは二千八百人を超えました。開戦以来のイラク人の死者数は少なめにみて五万人近く(イラク・ボディーカウント調査)、数十万人という推計もあります。

 イラクを一方的に攻撃し、占領を続ける米国は、深刻な矛盾に直面しています。米中間選挙(十一月七日投票)を前に、ブッシュ政権はかつてない窮地に立たされています。

米市民多数が戦争批判

 最近のCNNテレビ調査によると、米市民の64%がイラク戦争に反対し、57%が撤退期限を設定すべきだと答えています。十月実施の他の世論調査にも共通してあらわれている傾向です。

 「米国の対イラク軍事行動は正しかったか」に「ノー」が54%。「イラク戦争はテロから米国人をより安全にしたか」に「ノー」が66%(プリンストン社調査)。

 「米国のイラク派兵は誤りだったか」に「誤りだった」が56%。「ブッシュのイラク情勢対応を認めるか」に「認めない」が66%(ギャラップ社調査)です。

 占領が長引くとともに、この傾向は強まりこそすれ衰えることはありません。

 イラクで米国が直面する困難は、米国の戦争に大義がないことの証明です。多くの米国民がそのことにしだいに気付き、不正義の戦争に批判の声を上げるようになっています。米軍内部からも行動が起きてきました。

 ハワイ出身のワタダ中尉は、現役将校としてはじめてイラク派遣命令を拒否しました。最近、「イラク戦争は米国民をあざむいた戦争で、米国が侵略者だ」「戦争犯罪と侵略戦争をやめさせるために行動したい」と決意を語っています。

 すでに二百人以上の現役米兵が自国の国会議員に、イラクから米軍と米軍基地を速やかに撤退させるように直接訴える運動を広げています。イラクで従軍していた海兵隊員は「駐留を続ければ、暴力を永続化し、中東に不安定をもたらす最大の要因になる」とブッシュ政権の駐留継続政策を弾劾しています。

 ホワイトハウス報道官も「戦時下の兵士に疑念が生じることは異常ではない」といわざるをえない状況です。ニューヨーク・タイムズ紙も「軍事占領でなにかを達成できるというような機会は去った」と社説に書くようになっています。

 これまでと同じように米軍を派兵し、軍事占領と掃討作戦を続けるのでは、イラクの混乱を激しくすることにしかなりません。米国にとっても、戦争の誤りを継続することは、犠牲を増やして「イラク戦争症候群」を広げ、米国民の願いと利益に反します。

撤退なしに解決しない

 ブッシュ大統領も中間選挙で苦戦が伝えられるなか、イラク情勢に「満足していない」「戦術を変える」といいはじめています。しかし肝心の駐留米軍は「撤退させない」とくりかえし、増派もありうると強調しています。

 これでは、イラクの情勢悪化は打開できません。米国とともにイラクに攻め込んだ英国でも、国民の六割以上が駐留英軍の撤退を求めるようになっています。

 米政府とイラク政府のあつれきも伝えられています。米国民の多数が求めるように米軍は撤退に踏み出し、全占領国軍の撤退見通しも明確にすべきです。


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