2006年11月1日(水)「しんぶん赤旗」
主張
教育基本法改悪案
徹底審議で廃案に追い込もう
衆院教育基本法特別委員会で、政府提出の教育基本法改悪案の審議が再開されました。政府・与党は、短時間の審議で衆院を通過させ、今国会での成立をねらっています。
前国会で、“約五十時間の審議をやったから、一定時間の審議をすれば、採決という出口の問題を考えたい”という、政府・与党の主張は、絶対に認めるわけにはいきません。
新たな問題が次々と
前国会では、憲法にかかわる重大な問題が明らかになりました。国家による「愛国心」の強制は、内心の自由を保障した憲法一九条に反します。教育基本法一〇条を改悪し、教育内容への無制限の国家的介入を可能にし、憲法に保障された教育の自由と自主性をふみにじる点も許されません。
重大なのは、新たに、徹底した審議が必要な問題が次々と起こっていることです。安倍新内閣の「教育再生プラン」は、教育基本法改悪と一体のものであるにもかかわらず、これまで国会で論議されていません。また、東京都の「日の丸・君が代」強制が憲法一九条とともに教育基本法一〇条に反していると断じた東京地裁の判決は、立法府としても重く受け止めるべき問題です。
いじめ自殺という、教育の場で絶対に起こってはならない問題も、教育基本法改悪案と関係があります。
日本共産党の志位和夫委員長は、教育基本法改悪がいじめ問題の解決に逆行することを、二つの角度からとりあげました。
一つは、教育基本法を改悪すれば、いじめの早期発見と教職員集団による一致協力したとりくみを妨げることです。
文部科学省の文書でも、いじめ問題の解決にあたっては、件数の多少よりも、「迅速に対応し」「教職員が一致協力して」とりくむ重要性を強調しています。安倍首相も、「いじめの件数ではなく」「ただちに対応することが重要」と答えました。
ところが、現実は、志位委員長がとりあげたように、件数の多少で学校と教師を評価し、実態を見えなくさせ、教師集団が協力して対処することを困難にしています。これに拍車をかけるのが、教育基本法改悪案に盛り込まれた教育振興基本計画による数値目標の押し付けです。
“いじめの件数ではない”と首相はいいながら、教育基本法を改悪しいじめ件数の多少で評価するやり方を義務づけるのは矛盾です。
もう一つは、いじめの温床に子どもたちの強いストレスがあること、その一番の原因は過度の競争主義が学校に持ち込まれていることです。教育振興基本計画には最初に競争目的の全国一斉学力テストの実施が明記されています。
志位委員長は、政府の補助金による調査で中学三年生の三割が「抑うつ傾向」にあることや、東京のある区で一斉学力テスト対策によって子どもが疲れ果てている実態をとりあげ、いじめとストレス、競争教育との関係をただしました。首相は「今の段階では何とも申しようがない」「(政府の)教育再生会議で対応策を議論している」とのべるだけです。
解決すべき問題が山積
首相も政府も、いじめ克服の方向性さえ示せないもとで、教育の根本法である基本法を改悪するなどということは、絶対に許せるものではありません。高校の未履修問題も、背景に過度の受験競争が横たわっており、解決すべき教育の問題が山積しています。
徹底審議が必要であり、教育基本法改悪案は廃案にすべきです。