2006年10月30日(月)「しんぶん赤旗」

滝川小6いじめ自殺 北海道

遺書隠した市教委

数値目標で教師統制

“貧弱な教育の犠牲者” 元PTA連合会会長


 北海道滝川市内の小学六年生の女児(当時十二歳)が、いじめを苦に自殺した事件で学校や滝川市教育委員会は、女児が自殺を図ってから一年以上もの間、いじめを否定し、いじめを示唆する遺書の内容を隠し続けてきました。背景を探りました。(秋山強志)


 女児が小学校の教室で自殺を図ったのは昨年九月九日。部屋分けなどで仲間はずれにされた修学旅行から戻った、わずか一週間後のことでした。

たえられずに

 学校や家族にあてて七通の遺書を残していました。遺書には「5年生になって人から『キモイ』と言われてとてもつらくなりました」「6年生になって私がチクリだったのか差べつされるようになりました。それがだんだんエスカレートしました」「私は、みんなに冷たくされているような気がしました。とても悲しくて苦しくて、たえられませんでした。なので私は自殺を考えました」などと書き残していました。女児は今年一月、入院先の病院で意識を一度も取り戻さないまま息を引き取りました。

 遺族は、当初からいじめが原因で自殺したことを認めるよう求めていましたが、市教育委員会はかたくなに拒否。記者会見でも市議会に対しても、遺書の内容を隠し、「手紙は友人関係について好き嫌いを表現したものだった」などと偽って報告していました。

 市教委が、女児がいじめが原因で自殺したと認めたのは、遺族が遺書を報道機関に公開し、新聞・テレビなどで真実を知った市民・世論の強い批判を浴びてからでした。女児が自殺を図ってから、一年以上がたっていました。

 遺族の男性(58)は「学校や市教委は、ずっと臭いものにふたをしてきた。今回も、わたしたちが黙っていたら、うやむやにされていたに違いない」と、学校や市教委への強い不信感を表明します。「いじめとは、自分の生きる価値、自尊心を破壊されること。あの子は、自分を守るために死を選ばざるを得なかった。わたしにとって一番大切なものを失った」と苦悩を語り、「ようやくいじめがあったことは認めた。具体的な事実を明らかにさせたい」といいます。

 男性は、弔問に訪れた日本共産党の清水雅人滝川市議に「日本共産党は弱者の視点を持っている。行政の暴走を食い止めるためにがんばってほしい」と、真相解明への協力を要請しました。

道教委も認識

 いじめ隠しは、滝川市教委だけの問題ではありませんでした。

 市教委を指導助言する責任を負う道教育委員会も、市教委から随時報告を受けていました。しかし道教委は、自殺がいじめを苦にしたものであることを認識しつつ、対応を市教委任せにし、放置していました。

 市教委と道教委のいじめ隠しの姿勢は、九月に道教委が発表した「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」にも表れています。

 道内の小学校千四百一校で発生した「いじめ」は、二〇〇一年から〇五年までの五年間に二百五十六件から百二十七件に半減したとされ、「全体的には、過去五年間減少傾向」と分析しています。しかし女児が自殺を図った昨年度も、滝川市教委は「いじめゼロ」と道教委に報告していました。

 清水市議から「ゼロ」報告を聞かされた市内のある小学生の母親は「えっ、なんで!」と声を上げ、「うちの娘は、小学校に入ってから六年間ずっといじめられ、先日も学級会で担任教師が指導したばかりです。あちこちでいじめられて苦しんでいる子がいるのを知っています。その調査には、現実が反映されていません」と怒ります。

 元滝川市PTA連合会会長は「滝川市は、教育にお金をかけていない。管理職は長時間拘束され、教職員も余裕がない。あの子は、そういう中での犠牲者だ」と語っています。

 札幌で教育電話相談の活動をしている北海道子どもセンターの土井寿(ひさし)さんも「夏休み以降相談件数は三倍にも増えました。いじめが現実に減っているとは考えにくい」と指摘します。「いじめと向き合い、現場で苦闘する教師への支援より、数値目標による管理と統制で教師たちをしばり付けていることが、滝川市のいじめ隠しにつながっているのではないでしょうか」と話していました。


女児の遺書の内容(一部抜粋)

 学校のみんなへ

 この手紙を読んでいるということは私が死んだと言うことでしょう

 私は、この学校や生とのことがとてもいやになりました。それは、3年生のころからです。なぜか私の周りにだけ人がいないんです。5年生になって人から「キモイ」と言われてとてもつらくなりました。6年生になって私がチクリだったのか差べつされるようになりました。それがだんだんエスカレートしました。(中略)何度か自殺も考えました。でもこわくてできませんでした。

 でも今私はけっしんしました。(中略)

 私は、ほとんどの人が信じられなくなりました。でも私の友だちでいてくれた人には感謝します。「ありがとう」。それから「ごめんね」。(中略)私は友だちと思える人はあまりいませんでしたが今まで仲よくしてくれて「ありがとう」「さよなら」。

 6年生のみんなへ

 6年生のことを考えていると「大嫌い」とか「最てい」と言う言葉がうかびます。(中略)みんなは私のことがきらいでしたか?きもちわるかったですか?私は、みんなに冷たくされているような気がしました。それは、とても悲しくて苦しくて、たえられませんでした。なので私は自殺を考えました。(中略)さようなら


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