2006年10月27日(金)「しんぶん赤旗」
主張
いじめ問題
教育基本法改悪が解決を阻む
子どもがいじめられて自殺する事件が相次いでいます。福岡県筑前町の中学二年生の男子生徒は、「いじめられてもう生きていけない」と遺書を残して、今月十一日に命を絶ちました。昨年九月に自殺をはかり、今年一月に死亡した北海道滝川市の小学校六年生の女子児童も、残された遺書からいじめが原因だとわかりました。
「なぜ命を絶たなければならなかったのか。真実を知りたいのです」と、筑前町の男子生徒の母親が、本紙(二十三日付)に胸の内を語っているように、何よりも真相の解明が求められます。
背景に政府の数値目標
同時に、文部科学省の全国調査が、いじめの実態と乖離(かいり)している事実は見過ごせません。
いじめによる自殺が現に起こっているのに、文部科学省の調査ではいじめを理由とする自殺が一九九九年度以降七年間ゼロとなっています。事件後、筑前町の学校では自殺した男子生徒以外のいじめの事実も明らかにされましたが、そうしたいじめの実態も隠されたままでした。
いじめがなぜ隠ぺいされたのかを明らかにすることは、「真実を知りたい」という遺族の願いにこたえるためにも、また、いじめ問題を解決するうえでも、欠かせません。
日本共産党の石井郁子衆院議員はいじめの実態と文科省統計との乖離の背景に同省が推進している数値目標の押し付けがあると、衆院文部科学委員会で指摘しました(二十日)。
伊吹文明文部科学相は、いじめ隠ぺいの事実については認めながら、「要は校長、教頭、教育委員会の人間力」と答えました。数値目標の押し付けという政府の強制が問われているのに、それを現場の責任のみに転嫁する態度は許せません。
いじめの解決を数値目標ではかるという間違ったやり方は、教育基本法改悪案と深く結びついています。
政府の教育基本法改悪案は、政府が「教育振興基本計画」によって、教育内容を、数値目標をふくめて詳細に決め、実施し、評価することができるとしています。
政府は、この教育振興基本計画の政策目標の例として、すでに二〇〇三年三月に「いじめ、校内暴力などの『五年間で半減』を目指す」をあげています。文科省のいじめの件数は、全国の小中高の学校数をはるかに下回ります。「五年間で半減」という目標は、学校ごとにみれば「ゼロ」目標とならざるをえません。
実際、石井議員がとりあげた新潟市では、目標でも評価でも、いじめ発生をゼロとしないと、学校からの報告を教育委員会が受け取らない仕組みが、できあがっています。
政府が主導して、競争と統制を強める教育基本法改悪案は、学校現場のいっそうの荒廃をもたらします。
人間を大事にする教育を
日本共産党は、子どものいじめ自殺が社会問題となった十数年前に、「人間を大事にする教育の実現こそ、『いじめ』問題克服の道」(一九九五年五月四日)という提言を出しました。人間を大事にする教育の欠如がいじめ問題の根本にあるという立場から、憲法と教育基本法を学校教育の中心にすえた教育への転換を訴えました。いじめ問題の解決は、件数ではかれるものではありません。学校で人間を大切にする教育を中心にすえ、家庭、地域でも話し合うことが大切です。
教育基本法改悪案を廃案に追い込み、現行法を生かすことが、いじめ問題の解決にも欠かせません。