2006年10月25日(水)「しんぶん赤旗」
主張
福島前知事逮捕
「税金を食い物」の腐敗断て
福島県発注の公共工事をめぐる談合事件で、東京地検特捜部は佐藤栄佐久前知事を収賄の疑いで逮捕しました。
事件の構図は、前知事の権力を背景に談合の仕切り役となった前知事の実弟にゼネコンや県内建設業者が群がり、県土木部などがくわわる組織的な官製談合で、税金を食い物にしたという悪質なものです。司直の捜査にとどまらぬ徹底した真相解明で、責任の所在と再発防止策を明確にすることが欠かせません。
大型開発優先県政
佐藤前知事は阿武隈川流域下水道工事の談合で実弟が逮捕されたのを機に「道義的責任をとる」と辞職しました。しかし、その責任は「道義」上にとどまるようななまやさしいものではありませんでした。
県発注の木戸ダム建設工事の受注の見返りに、土地を高値でゼネコン側に買わせる形でわいろを受け取ったことが収賄罪に問われました。
五期十八年間にわたった佐藤県政は、大型開発優先のゼネコン県政でした。県民のくらしや福祉を後回しにした逆立ち県政こそが、腐敗の温床となったことは明らかです。
談合疑惑は流域下水道工事、木戸ダム工事にとどまらず、あぶくま高原道などにも広がっています。県民生活にとって不要不急な無駄づかいとして、日本共産党県議団が批判してきた事業ばかりです。
県議会は日本共産党を除いて「オール与党」で、黒い金は知事選の買収資金として多数の県議にも流し込まれたとされます。前知事と癒着して腐敗県政をすすめた自民、公明、県民連合(民主、社民系)などの責任も重大です。十一月十二日に投票される出直し知事選では、この点も厳しく問われます。
前知事は「クリーン県政」の看板を掲げていました。辞職のさいも「やましいことはしていない」と弁明しました。汚職に口をぬぐい、最後まで県民をだます許しがたい態度です。
実弟は、清潔を装う前知事の「身代わり」として、汚れ役を引き受けていました。県庁の発注部署が実弟いいなりに発注する官製談合の仕組みが代々つくられたのも、知事と一体だったからです。談合は、前知事の容認のもと、実弟の立場を使うことなしにはありえませんでした。
政治家の親族が身代わりとなって「口利き」することを抑止する上で、現行法制には大きな不備があります。政治家が行政に口利きして見返りを得ることを犯罪とする「あっせん利得処罰法」の問題です。
同法は二〇〇〇年の総選挙後に日本共産党など野党が共同で提案し、与党が抜け穴だらけにして成立させたものです。〇二年の改正論議のさいに野党は、対象を政治家の親族にまで広げ、すべての抜け穴をふさいで、実効あるものに強化することを提案しました。こうした規制が働いていれば、福島の談合事件も芽のうちに摘み取ることができました。国政の場でも本格的な腐敗根絶策を真剣に検討すべきです。
奥深い闇にメスを
福島談合事件が表面化した端緒が、三重県の水谷建設の脱税事件であったことは重要です。「政商」を自任し、巨額のヤミ資金を政界や暴力団に流すことで、建設談合の前さばきにあたってきたという同社の奥深い闇の全体に切り込み、うみを出し切らなければなりません。
談合の最大の被害者は、血税をかすめとられる国民です。いまこそこの悪弊を断ち切るために、腐敗を許さぬ世論を広げるときです。