2006年10月23日(月)「しんぶん赤旗」
列島だより
市営住宅
建設で地域に活気
愛知 豊橋市
高齢者「寂しくない」
近隣住民と食事や娯楽も
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愛知県豊橋市では、高齢者向きの市営住宅に、入居者と近隣住民が共用する談話室をもうけ喜ばれています。鹿児島市では、高齢化が進んでいた地区に市営住宅を建設し、地域の活性化につなげています。市営住宅の建設をめぐる両市の試みを紹介します。
豊橋(とよはし)市は、人口約三十八万人の愛知県下三番目の都市で、六十五歳以上の高齢者人口割合は16・7%です。
豊橋市の住宅事情は、住宅総数約十二万戸のうち持ち家が59%、公営住宅は市営四千戸、県営二千八百戸、雇用促進四百戸、総数七千二百戸(6%)となっています。
市は、二〇〇一年度から二〇一〇年度までの十カ年目標で「豊橋市住宅マスタープラン」を策定し、キーワードを(1)環境共生(2)高齢者対応(3)多様なライフスタイルに対応(4)まちづくりと連動―とし、市営住宅整備を進めています。
老人世帯向きに
特に、民間アパートでの入居条件が厳しい高齢者に対して、六十歳以上の一人暮らしを含めた老人世帯向き住宅を重視し、新設や建て替えのときに増やしています。
マスタープラン策定後、市営住宅は新設と建て替えにより、建て替え前の戸数、二百四十八戸から三百九十九戸にと整備しました。老人向き住宅は、そのうち百六十戸(40%)で、二〇〇〇年度以前は二十一戸しかなかったところから大幅に増えました。
中でも、旭本町高齢者住宅と池上住宅は、単身でも入居できる「協同居住型住宅」とし、家賃も最低一万四千六百円(月額)からと低く抑えています。
「協同居住型住宅」は、台所、浴室、トイレを備えた入居者専用の独立した居住部分と、食事や娯楽などを入居者と近所の人たちと共用で利用できる談話室がある集合住宅です。
それぞれに利点
旭本町住宅では、町内会の会合の場、テレビを見ながらマッサージ機の利用、コーヒーやお茶を入れながら読書、編み物、将棋などの趣味や娯楽に、近所の人たちと一緒に利用しています。入居者は「民間アパートのときは一人で寂しかった。今は談話室に行くと近所の人も来ていて、寂しくない。楽しく元気になった」と話してくれました。
近所の人は「遠くの市民館まで行かなくてもよくなった。近くて助かります」と言っています。それぞれの利点を生かした住宅が喜ばれています。
日本共産党市議団は、民間アパートで入居契約してもらえず困っている一人暮らしの高齢者から相談が多くあったことから、市営住宅整備には、高齢者向きの戸数を増やすことを議会で繰り返し取り上げてきました。その中で「住宅マスタープラン」に反映され、一気に増えてきました。今後も、市が建て替え計画を着実に実行するようがんばっていきたいと思います。(伊達勲市議)
鹿児島市
人口減すすむ地区に
児童倍加 学校も存続
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鹿児島(かごしま)市の市街化調整区域内に「指定既存集落制度」による市営住宅建設と自家用住宅などの建設がすすめられています。人口六十五万人を超える鹿児島市の中で、市街化調整区域内では、人口減と高齢化がすすみ、児童減による小・中学校の統廃合が心配されていました。
40歳未満が半数
鹿児島市では、これらの対策として現行制度の中で対応できる「指定既存集落の指定」(一九九七年)を行い、二〇○四年には、さらに「従前に十年間、当該既存集落又はその周辺の市街化調整区域内に住んでいた人」を対象とする条件緩和によって、これまでに三百七十九件の自家用住宅などが許可されています。そのうち四十歳未満の申請件数は47%にのぼります。
また、市営住宅建設は五地区に六十五戸建設されています。
この制度は、日本共産党市議団が「指定既存集落の指定で、調整区域内の人口減、児童減に歯止めをかけ、地域活性化を」との提案(九六年)を行って以来、「指定要件の緩和」「市営住宅建設」の提案と続き、市当局が次々と実施に踏み切ってきました。
党市議団の市議会での提案のきっかけとなったのは、鹿児島市南部・山間部に位置する錫山地区から「休耕地は増え、人口と児童減で学校も統廃合になる。なんとかして」との要望が平山孝市議に寄せられ、地区住民との繰り返しの懇談会と議会報告の中で練り上げられたものです。
調整区域内の市営住宅建設第一号となった錫山地区は、九八年には小・中学校合わせた児童・生徒数が二十七人にまで減っていました。十戸の市営住宅建設で児童数は毎年増加に転じ、今年の新一年生は二十九年ぶりに十一人の新入生を迎えての入学式となり、児童数は八年前と比べ約二倍の五十二人となっています。
鹿児島市の制度の特徴は「市営住宅募集案内」にも表れています。「既存集落活性化住宅」は「市街化調整区域内の指定既存集落の活力を保持するための市営住宅です」「住宅はいずれも小学校の近くにあり、平屋建ての木造長屋住宅で菜園付きの専用庭に木造テラスのついた三DKとなっています」「なお、この住宅については事業の主旨から小学生以下のいる世帯などの募集となります」と明記されています。
地域ぐるみで行事
植木邦昭錫山校区公民館副館長は、「市街化調整区域のため、親の土地はあっても家を建てることが難しく、人口減と高齢化で地域は衰退してきていました。平山市議に相談し、市営住宅ができ、若い人が多くなり、市街地に住んでいた後継者も帰ってきて、地域ぐるみの運動会、三世代ふれあいスポーツ大会などで地域に元気が出てきました。児童数も増え、学校も存続しました。さらに、市営住宅増設で活性化を」と取り組んでいます。(平山孝市議)