2006年10月23日(月)「しんぶん赤旗」
公正な政治求め22万人
労組総同盟主催 首都では8万人
ドイツ5都市で集会
【ベルリン=中村美弥子】ドイツ労働組合総同盟(DGB)は二十一日、メルケル首相が率いるキリスト教民主同盟・社会同盟と社会民主党の大連立政権が進める社会・労働政策に抗議する集会を国内五都市で開き、二十二万人(主催者発表)が参加しました。
|
DGBのゾンマー議長は南西部バーデン・ビュルテンベルク州シュツットガルトの集会に参加。「社会的公正を無視して進められる政府の改革は、わが国の民主主義にはかり知れない損害を与える」と主張し、年金支給年齢や付加価値税(消費税)の引き上げを強行し、健康保険改革で労働者に痛みを押し付けるメルケル政権を批判しました。
首都ベルリンでは、ブランデンブルク門前に国内最大規模の八万人が集結。「統一サービス産業労組」(ベルディ)のブジルスケ委員長は、「政府が進める改革で、低所得者、失業者、年金生活者はいま重要な節目を迎えている。政治変革は可能であり、どうしても必要だ」と呼び掛けました。
チューリンゲン州ゴータ市から参加したバス運転手のフリッツ・フィッシャーさん(51)は、ミュンヘンで単身赴任生活です。「月二百六十時間も働いているのに、給与はわずかです。五人の孫にプレゼントを買ってやる余裕もありません」と言い、「最低賃金制度を導入してほしい」と訴えました。大学生のヤニ・ツィマーマンさん(22)は、「社会的富はもっと平等に分配されるべきだ」と職業訓練の機会拡充を訴えました。ベン・シューベルトさん(19)は、「より公正の税制を求めるため」に参加。「人間一人ひとりが大切にされる政治を望む」と語りました。
集会はドルトムント、フランクフルト、ミュンヘンでも開かれました。
解説
税・保健・年金 庶民に負担
今回のDGBの全国集会は、来月に政権誕生一年を迎えるメルケル政権の「間違った政策を正すため」(ゾンマー議長)で、DGBは今後も抗議行動を予定しています。
キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)と社民党の二大政党連立に対し、DGBは当初は労働者の利益になるように建設的な協議をする立場でした。しかし、ここにきて批判へのかじをきった格好です。
連立政府は、税制では来年一月からの付加価値税の現行16%から19%への引き上げを決定し、議会も承認。庶民の肩には間接税の重みがどっしりとのしかかることになりました。一方で法人税は、国際競争力をつけるためとして現在の半額の12・5%に下げ、これに法人地方税も加えた実効税率も現在の38%台から29%台に下げることで合意しています。
保健分野の主要な「改革」は両党の不一致から延期したものの、健康保険料の引き上げは二〇〇七年から実施されます。
さらに政府は年金受給年齢を現行の六十五歳から六十七歳に引き上げることを計画。失業者対策では、失業保険給付期間終了後に税から支給される失業給付金II(三百四十五ユーロ)の受給資格を制限するなどの措置をすでに実施してきました。
このため、連立与党への批判は強く、CDU・CSUの支持率は30%(独第一公共放送)と六年間で最低に低迷、社民党もほぼ同じレベルに落ち込んでいます。
社民党系のフリードリッヒ・エバート研究所が十月に「ドイツに新たな貧困層が生まれている」との報告を発表しました。野党ばかりでなく、社民党左派も批判を始めています。
(片岡正明)