2006年10月21日(土)「しんぶん赤旗」
横須賀 原子力空母 母港化の是非
「容認の市長に任せておけぬ」
始まった住民投票運動
横須賀の未来は私たち市民が決めます――。米海軍横須賀基地をかかえる神奈川県横須賀市で、日米両政府が強行しようとしている米原子力空母母港化。その是非を問う、住民投票条例の制定を求める直接請求運動がはじまっています。「市政史上初」に挑む住民の思いと動きを追いました。(山本 眞直)
住民投票条例制定の署名運動を呼びかけたのは幅広い個人でつくる「原子力空母母港化の是非を問う住民投票を成功させる会」。日本共産党や労組、民主団体でつくる「米原子力空母の横須賀配備を阻止する三浦半島連絡会」の各構成団体員も個人参加しています。
「あのときは本当に驚きでした。これはもう横須賀市長にまかせておけない。住民が意思を示す以外にないと強く感じました」
いまだに収まらないくやしさをにじませるのは市内野比のホームヘルパーの女性(52)。
「原子力空母ノー」をかかげて当選した蒲谷亮一横須賀市長はことし六月十四日、その公約を投げ捨てて「配備容認」を表明しました。
現在、横須賀港を母港にしている通常型空母キティホークが〇八年に退役します。原子力空母はその後継艦として日米両政府が〇五年十月に合意したもので、配備されるのはニミッツ級原子力空母「ジョージ・ワシントン」(排水十万二千トン)。全長三百三十メートル、乗員など五千七百人、FA18戦闘攻撃機、哨戒ヘリなど約八十機を搭載する「世界最大の軍艦」です。
市長豹変
米空母の本国以外の海外母港は横須賀が世界で唯一なら、原子力空母の海外母港化も世界初。
しかし「放射能漏れ事故」などへの不安から通常型空母の配備を容認してきた横須賀市や市議会も原子力空母配備にはくり返し反対を表明してきました。蒲谷市長も昨年七月の市長選で「原子力空母ノー」をかかげて初当選しました。
市民、自治体あげての原子力空母ノーの世論にあわてた米国政府が、「原子力軍艦は安全」とするファクトシート(公式資料)を作成。日本政府も同資料をもとに「安全が確認できた」として横須賀市に対し容認を迫りました。
蒲谷市長は、市議会全員協議会で「通常型空母の可能性がゼロになったいま、原子力空母の入港もやむを得ない」と容認を表明しました。市広報で「安全性」を宣伝する“豹変”(ひょうへん)ぶりです。
しかし先月発覚した米攻撃型原子力潜水艦「ホノルル」による放射能漏れ事故が「安全性」の不確かさを早くも証明しています。
短期決戦
「成功させる会」は署名を集める「受任者」を二千人以上募り、直接請求に必要な横須賀市の有権者(約三十六万人)の五十分の一、約七千百二十人を大幅に上回る署名を集めたい、としています。署名は十一月十日から十二月十日の一カ月間という短期決戦です。
会員や協力団体は受任者登録に向けて取り組みを本格化。横須賀市を中心に七千人の組合員がいる神奈川みなみ医療生活協同組合は「住民投票を成功させる医療生協の会」を立ち上げ、二十一日と来月十八日を「医療生協デー」にしています。
百人規模でハンドマイクによる駅頭宣伝やチラシを配布しながら、受任者登録と署名集めに総力をあげます。同生協に加盟する衣笠診療所の鈴木吉廣事務長は言います。
「独自に作成した『問答集』による勉強会なども開き、患者の命と平和を守る医療生協の力を発揮したい」
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