2006年10月21日(土)「しんぶん赤旗」
主張
法人税減税
庶民いじめ大企業潤す不公平
安倍首相が議長を務める経済財政諮問会議が、減価償却制度の拡充による大企業減税に加え、法人税の実効税率引き下げの検討に入ります。
同時に政府は税制調査会の新会長として、小泉内閣のときの経済財政諮問会議で、石弘光・政府税調会長に法人税率引き下げを迫った本間正明・大阪大教授を指名しました。
またもや大企業減税の動きです。
税率の大幅引き下げ
経済財政諮問会議では、御手洗冨士夫キヤノン会長(日本経団連会長)ら「有識者議員」が、「グローバル化の観点からの税制の構築が必要」と提案しました。「有識者議員」の丹羽宇一郎伊藤忠会長は、「(法人税の)実効税率の問題あるいは減価償却の問題」だと説明しています。
設備投資の費用を控除する減価償却制度の拡充については、政府はすでに六千億円規模の減税策の検討に入っています。それに加え、法人税の実効税率引き下げまで日程にのせるよう迫る厚かましい要求です。
日本経団連は、日本の法人税の実効税率はアジア諸国と比べて「約10%」高いとして、税率の引き下げを求めています。
経済財政諮問会議で尾身財務相は、「少なくとも(諸外国と)イコールフッティング(同等条件)の税制を打ち立て」るべきだとのべました。財界の主張そのものです。
グローバル化、イコールフッティングと言っても、法人税と社会保険料を合わせた企業負担をGDP(国内総生産)比で比べると、日本は欧州諸国より相当低いのが実態です。法人税の実効税率自体、日本は米ニューヨーク州より6%以上低く、欧州諸国と同水準です。
しかも、日本には大企業向けのさまざまな優遇税制があります。例えば「研究開発減税」は、研究費の規模が大きい大企業の法人税率を6%も引き下げる効果があります。
アジアとの比較でも、経済発展や社会資本、制度の違いを無視して税率だけで比べるのは乱暴です。例えば、企業の法人税負担をGDP比で比べると、韓国2・7%、タイ3・7%、マレーシア8・9%に対し日本は2・5%、社会保険の企業負担は上海44%、日本は13%です。
高齢者には、住民税の増税、国民健康保険料などの値上げで、大幅な負担増が襲いかかっています。
政府は「世代間の公平」を図るためだと言い訳しています。しかし高齢者には、雇用や健康面など、現役世代と比べて収入・支出の両面で不利な条件があります。同じ負担を押し付けるのは「不公平」です。等しい条件で比べると、今回の住民税増税で、現役世代よりも年金世代の税負担の方が重くなってしまう場合さえあります。
その一方で、現役世代の家計にも定率減税の半減が直撃し、来年には全廃の影響が出てきます。
庶民に重い負担増を押し付けながら、空前の利益を上げている大企業には減税を続け、いっそう負担を軽くしてやろうというのです。これこそ不公平の極みではありませんか。
財界言いなり改めよ
御手洗経団連会長は「(財政再建での)財源不足は消費税の引き上げで対応する」と記者会見で語っています。財源不足には当然、大企業減税による減収分が含まれます。
庶民につらい消費税の増税は、大もうけの大企業に減税する財源に吸い込まれることになります。
大企業の税金負担の能力は過去最高です。「財界言いなり」をやめ、“庶民に増税、大企業に減税”の不公平を改めるよう求めます。