2006年10月19日(木)「しんぶん赤旗」
学校評価制の検討へ
教育再生会議が初会合
安倍晋三首相が最重要課題と位置付ける「教育改革」を議論する「教育再生会議」(座長・野依良治理化学研究所理事長)の初会合が十八日、首相官邸で開かれました。
冒頭、安倍首相は「教育再生の最終的な大目標は、すべての子どもに高い学力と規範意識を身につける機会を保障することだ」と発言。今後の検討課題として、(1)教員免許の更新制度の導入(2)外部評価を含めた学校評価制度の導入(3)ボランティア活動の実施(4)大学や大学院の国際競争力の強化―などを挙げました。
初会合には野依座長ら十七人の有識者全員と塩崎恭久官房長官、伊吹文明文部科学相、下村博文官房副長官らが出席しました。再生会議は今後、論点を整理した上で、学校や地域・家庭教育の再生などテーマごとに三つ程度の分科会を設けて議論します。学校を予算で差別する教育バウチャー制度や学校選択制、大学の九月入学なども検討対象になる予定です。来年一月に中間報告、来年末をめどに最終報告を取りまとめる方針です。
会議終了後、記者会見した事務局長の山谷えり子首相補佐官は「学力向上の具体的な支援策や教員の免許更新制度の議論は、優先的にやらないといけない」と語りました。
解説
安倍流「改革」推進メンバーも
十八日に議論が始まった「教育再生会議」の主な検討課題は、子どもたちを競争に追いたて教育の格差を広げるものがずらりと並んでいます。臨時国会で安倍内閣が成立をねらう教育基本法改悪法案と一体となり、「勝ち組」「負け組」教育の具体化・実施をめざす会議といえます。
検討課題のひとつ、「教員免許更新制度」の導入は、研究者から「教員の身分が不安定になることのマイナスの方が大きい」との危ぐが出ているものです。「学校評価制度」は「レッテル張りの基盤にもなり、学校の序列化を生む」と批判されています。
「教育バウチャー制度」は、親が選択した学校にバウチャー(利用券)を提出し、学校は生徒数(バウチャー数)に見合う予算を受け取るというものです。人気のない学校には予算も少なくなる仕組みで、学校間格差を一気に拡大します。「大学九月入学」は、高校卒業後に一定期間の「奉仕活動」を義務づけるねらいがあります。
再生会議には、一見多様な顔ぶれを集めたように見えますが、安倍流「教育改革」にふさわしい人物をしっかり配置しています。葛西敬之・JR東海会長は首相のブレーンです。張富士夫・トヨタ自動車会長は日本経団連副会長も務め、葛西氏とともに愛知県に中高一貫の全寮制男子校「海陽学園」を今年四月に設立。同校は教育方針に「国の核となる優れたリーダーを育てる」エリート養成を掲げています。
渡辺美樹・ワタミ社長は中高一貫校の理事長も務め、教師に成果主義賃金を導入。「だめな教師が集まっている学校はつぶれてもいい」(「日経」十月十三日付)と発言しています。白石真澄・東洋大教授は規制改革・民間開放推進会議の委員を務め、バウチャー制度について「競争環境がつくられ」ると推進姿勢を示しています。
門川大作・京都市教育長は京都市のすべての学校で外部評価を含む学校評価制度をトップダウンで導入した人物です。
「教育再生」の名のもとで教育の格差と競争をいっそう拡大する議論に監視と警戒が必要です。(小林拓也)