2006年10月17日(火)「しんぶん赤旗」

北朝鮮制裁決議受け 「周辺事態」認定というが

政府の従来説明にも反する


 国連安保理の北朝鮮制裁決議を受け、日本政府や自民党は、決議に盛り込まれた「貨物検査」に日本が参加するため、今回の事態を「周辺事態」と認定し、「周辺事態法」や「船舶検査法」を発動することを検討しています。しかし、同法をめぐるこれまでの政府の説明などに照らしても、「周辺事態」と認定するのは極めて乱暴で道理のないことです。

6つの具体例

 政府や自民党内で、今回の事態を「周辺事態」と認定する根拠として挙げられているのは、政府が一九九九年四月に示した「周辺事態」の定義に関する統一見解です。見解は「周辺事態」の六つの具体例(別項1)を示し、その一つとして「ある国の行動が、国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為と決定され、その国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合」を挙げています。今回の事態は「この範疇(はんちゅう)に入る」(麻生太郎外相)というのです。

 しかし、政府は「周辺事態法」の審議の際に、そうした具体例に当てはまるからといって「そういう場合すべて『周辺事態』に該当するということではなくて、そういう場合であって『わが国の平和と安全に重要な影響を与える事態』が『周辺事態』」(高村正彦外相=当時)だと答弁。「(具体例の)いずれも最後に、『わが国の平和と安全に重要な影響を与える場合』という言葉で締めくくっているわけで、それについては、やはり個々具体的な場合に、その都度判断せざるを得ない」(同)と説明していました。

 「ある国の行動が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合」であっても、それに加えて「わが国の平和と安全に重要な影響を与える場合」でなければならないという説明です。

可能性を例示

 「周辺事態法」が規定する「周辺事態」の定義(別項2)には「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等」という説明があります。つまり、六つの具体例はあくまで「周辺事態」が発生する可能性のある原因を例示したにすぎず、その前提としては、放置すれば日本への武力攻撃に至るおそれなどがなければならないということです。

 政府は国会で「まさに次の段階はそう(日本への武力攻撃に)なりそうだというような時が(『周辺事態』の)典型的な例」(同外相)だとも答弁しています。

 政府の説明からしても、「周辺事態法」はまさに日本「周辺」地域での有事が前提として想定されていたのです。今回の事態を「周辺事態」と認定するのは到底通用するものではありません。(榎本好孝)


(別項1) 政府が統一見解で示した「周辺事態」の6つの具体例
(1)日本周辺地域で武力紛争の発生が差し迫っている場合
(2)日本周辺地域で武力紛争が発生している場合
(3)日本周辺地域で武力紛争そのものは一応停止したが、いまだ秩序の回復・維持が達成されていない場合
(4)ある国で「内乱」「内戦」等の事態が発生し、国際的に拡大している場合
(5)ある国での政治体制の混乱等で大量の避難民が発生し、日本への流入の可能性が高まっている場合
(6)ある国の行動が、国連安保理によって平和に対する脅威、平和の破壊または侵略行為と決定され、その国が国連安保理決議に基づく経済制裁の対象となるような場合
(注)これら6つの場合はいずれも、それに加えて「日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」という条件が付いています。

(別項2) 「周辺事態法」第1条規定の「周辺事態」定義
 「そのまま放置すれば我が国に対する直接の武力攻撃に至るおそれのある事態等我が国周辺の地域における我が国の平和及び安全に重要な影響を与える事態」


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