2006年10月16日(月)「しんぶん赤旗」

「アルメニア人虐殺」否定処罰法めぐり

仏・トルコ関係が緊張


 【パリ=浅田信幸】第一次大戦の最中、オスマントルコ帝国内部で起きた「アルメニア人虐殺」問題をめぐってフランス国民議会(下院)が十二日、「虐殺」否定者を処罰の対象にする法案を可決したことがトルコを刺激し、両国間の関係が緊張しています。フランス政府はトルコとの外交関係に配慮、法案に距離を置く姿勢を明確にしましたが、トルコでは仏産品の不買運動の動きが出ており、同国の欧州連合(EU)加盟交渉を進める欧州委員会もフランス議会の動きににがりきっています。

 アルメニア人虐殺問題は、一九一五―一七年にかけて、オスマントルコがキリスト教徒のアルメニア人を「敵国ロシアに内通した」との理由で百五十万人を殺害したとされる事件です。トルコ側はこれを「大虐殺(ジェノサイド)」とは認めず、三十万―五十万人の死者が出た戦時の事件だとしています。

 フランスでは二〇〇一年にこれを「大虐殺」だと認定する法律が成立しています。今回の法案は野党・社会党の提案で、大虐殺否定は、懲役一年、罰金四万五千ユーロ(約六百七十五万円)の処罰の対象になります。

 歴史学者やマスコミは、法案は「言論の自由」を侵害するとして相次いで反対を表明。与野党ともに内部の異論も多く、自由投票を決め、結局大半の議員が欠席する中で可決されました。来春の大統領選挙・総選挙を控えて、四十万人といわれるアルメニア移民の意向を無視できないといううがった見方もあります。

 トルコのエルドアン首相は猛反発し、国民議会での可決後には不買運動などなんらかの経済的対抗措置を検討すると表明しました。トルコ各地では反仏デモが繰り返されています。

 EU加盟交渉の難航も手伝って、トルコでは民族主義や反EU感情が高まりつつあり、逆にEU諸国内では反トルコ感情がじわじわ広がる気配に、欧州委員会も対応に苦慮。レーン欧州委員(拡大担当)は、「トルコとアルメニアの和解に向けた対話を阻害」するとフランス議会の動きをけん制しています。法案は今後、上院での審議となりますが、来春の選挙前に成立するかどうか微妙な状況です。


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