2006年10月13日(金)「しんぶん赤旗」
将棋新人王戦U―26決勝 第2局
糸谷四段 意表の作戦奏功
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第三十七期将棋新人王戦U―26決勝三番勝負は、勝率トップの糸谷哲郎四段か、キャリアを重ねた横山泰明四段か注目の一戦でしたが、十二日、大阪・関西将棋会館で行われた第二局は午後五時五十四分、横山泰明四段が投了し、糸谷四段が一九〇手の長期戦の末勝利しました。
午前十時、立会人の小阪昇七段、「しんぶん赤旗」の徳永慎二関西総局長らが見守るなか、対局開始。序盤、後手の糸谷四段が4、6手目に連続して端歩を突くという定跡からかけはなれた意表の手段に出て、駆け引きに満ちた将棋になりました。
振り飛車戦法を得意とする横山四段ですが、この端歩を見て、居飛車戦法の布陣を敷きました。一方、右玉戦法が得意の糸谷四段も今回は玉を左に囲い、相居飛車のたたかいとなりました。
中盤。横山四段が飛車を7筋に振って攻めの姿勢を見せました。自玉の守りを後回しにするリスクの高い指し方です。
その後は押したり引いたりの長期戦になり、糸谷四段が歩二枚の駒損をしたのには、「糸谷四段、失敗をしたと思いますわ」と立ち会いの小阪七段。しかし、糸谷四段は攻め駒が乏しい中、苦心の攻めをつないで△4八歩成とと金を作り、局面を打開しました。
控室のプロ棋士たちの形勢判断も「どちらが勝つか分からない」という一進一退の攻防が続きます。最後、形勢不利とみられる横山四段が入玉の態勢を見せて驚異的な粘りを発揮しましたが、持ち時間を五十分近く残していた糸谷四段が冷静に寄せ切りました。
局後の検討では、糸谷四段は「(80手目)△6六角と角を切った時点では形勢がよくなったと思いましたが、数手後▲3五飛と出られて分からなくなりました。最後は慎重になりすぎて長くなりました」といっていました。
今期は、糸谷四段の自信に満ちあふれた対局態度と盤上の指し手が、プロ棋士や記者など観戦者に強烈な印象を残した三番勝負でした。
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