2006年10月13日(金)「しんぶん赤旗」
主張
共済規制
「助け合い」つぶしは許せない
改定保険業法による新制度で「自主共済」が存立の危機に立たされています。新制度は共済を保険会社と見なし、保険業法に組み入れて保険会社と同様の規制をかけます。
自主共済は非営利で、会員の相互扶助が目的です。不特定多数を対象に営利を追求する保険会社と並べることには何の道理もありません。
日米保険業界の圧力
新制度で大多数の共済は“ミニ保険会社”として登録させられます。経過措置はあるものの最低一千万円の資本金や、保険専門スタッフの配置、保証金の供託や法人税の納税などが必要になります。わずかな資金を出し合い、ぎりぎりの経費で会費の大部分を会員に還元している自主共済には重過ぎる負担です。
知的障害者の互助会(共済会)は、親たちが月千円ほどの会費を出し合い、医療負担を少しでも和らげようと付き添い看護料や差額ベッド代を助成しています。知的障害があると契約を拒否する保険会社が多く、互助会は万一のときのかけがえのない支えです。“ミニ保険会社”化について、関係者からは「会員の負担を大幅に増やせというのか」「このままでは解散に追い込まれる」と憤りの声が上がっています。
民商・全商連の共済会は月千円の会費で、入院見舞金や出産祝い金を支給し、健診も実施しています。厳しい経営環境の下で中小業者が健康を支え合うために活動しています。
政府は保険業法改定の目的について、「共済」を名乗る悪質商法を規制し、消費者を守るためと説明してきました。消費者を守るための法改定で、こうした助け合いの共済が続けられなくなるのは本末転倒です。
改定保険業法を議論した金融審議会では「まじめな共済が活動しやすい状況をつくることが重要」「良質業者をブルドーザーでつぶすようなことがないように」と意見が出ました。審議会報告書も言っています。「構成員が真に限定される」共済は「規制の対象外とすべき」だ―。
「まじめな共済」「構成員が限定される共済」は「規制の対象外とすべき」だという考え方からすれば、自主共済は保険業法の適用から除外されなければなりません。
ところが、実際に適用除外となったのは生協法や農協法のような根拠法を持つ共済のほか、企業、労働組合、宗教法人の共済、千人以下の共済など狭い範囲に限られました。
この背景には、共済の規制でビジネスチャンスの拡大を狙う米国政府と日米保険業界の要求があります。
米国政府は日本に対する年次改革要望書で「すべての共済」に保険業法を適用するよう求めてきました。昨年の要望書では、今回の保険業法改定を「第一段階」の措置として歓迎し、さらに「新制度の徹底的で厳密な見直し」を要求しています。今回は対象外となった協同組合や労組などの共済も、数年内に実施する制度見直しの際には保険会社と同列に規制するよう迫っています。
日本社会にも大損失
国民の自発的な助け合い共済を日米保険業界の食い物にすることは日本社会にとっても大きな損失です。
「この社会は弱者に厳しい」(知的障害者の家族)。悲痛な嘆きに政治は応える責任があります。
衆院財務金融委で日本共産党の佐々木憲昭議員の追及に、金融相が「共済事業がきちんと運営できるように、できる限りのことはしたい」と答弁しています。すみやかに「助け合い自主共済」を保険業法の適用外とするよう政府に求めます。